Comet無料化

by Shogo

Perplexity AIが、月額200ドルのMax プラン限定だったCometを無料で一般公開した。すでに日本でもダウンロードできる。これまでに、数百万人がウェイトリストに登録していたそうで、期待の大きさが分かる。

このところ、AIブラウザには関心が高まっている。世界のAIブラウザ市場は2024年の45億米ドルから2034年には768億米ドルに達すると予測され、年平均成長率32.8%という成長が見込まれている。この背景には、従来の検索の限界と、AI技術によるブラウジングの革新へのニーズがあるようだ。

すでに、Arcブラウザで注目を集めたThe Browser Companyは、新世代AIブラウザ「Dia」を発表している。DiaはArcの後継として、タブとのチャット機能、AIによる文章作成支援、学習・計画の高速化などを特徴とし、現在macOSユーザー向けベータ版が提供されている。これは、まだ使い始めたばかりで、チュートリアルを見ながら学習中だが、なかなか慣れないが、便利そうだ。

他社も黙ってこの流れを見ていない。Googleは、AIブラウザの台頭を受けてChromeの大幅刷新を発表している。2025年9月に発表された「プロジェクトMariner」は、ウェブブラウザの操作を自動化するAIエージェントとして開発され、最大10個のタスクを同時実行できる機能を持つ。これは「ティーチ&リピート」機能により、ユーザーが一度操作を教えることで、類似の操作をAIが自動実行できるようになるシステムだ。これは、まだ日本では利用できない。

Chromeの市場シェア65.7%を占める圧倒的地位を活かし、Googleは既存ユーザーベースを維持しながらAI機能を統合する戦略を採用している。これまでに、Chromeに「AIモード」が組み込まれ、従来の検索をより会話的に改良して対抗をしている。

また、OpenAIも2025年1月に「Operator」を発表し、AIがブラウザを操作してタスクを実行するエージェント機能を月額200ドルのProユーザー向けに公開している。OperatorはGPT-4oのビジョン機能と強化学習を組み合わせた「Computer-Using Agent (CUA)」モデルを使用し、人間と同じようにウェブページを視覚的に理解してGUIを操作する能力を持つという。これは、高額な利用料がかかるので使ったことはないので、コメントできない。

さらに注目すべきは、ロイター通信が報じたOpenAIの独自ブラウザ開発計画だ。これはGoogleに対抗するための戦略的な動きと見られ、AI時代のOS構想の一環として位置づけられている。Perplexityのように一般向けの無料ブラウザーを発表する可能性は高いのでは思われる。

AI時代のブラウザ市場では、新たなビジネスモデルの模索が始まっている。

PerplexityのComet Plusは、月額5ドルのスタンドアローン版、またはPro/Maxプランでは追加料金なしで提供され、CNN、Conde Nast、Fortune、Le Figaro、Le Monde、Los Angeles Times、Washington Postなどの主要出版社が参加している。そして、広告の表示はされない。

無料版Cometは、ブラウジング中にAIアシスタント機能(Comet Assistant)を利用して検索や要約、コード生成などが行えるが、主要メディアの有料記事はプレビューのみで、広告もそのまま表示される。一方Comet Plusでは、広告なしのクリーンな画面で有料記事をフルアクセスでき、閲覧データに応じて出版社へ収益還元が行われる点が最大の特徴だ。

このComet Plusでは有料記事も読めるということで、収益の大半が出版社に還元される仕組みで、AIが記事をタダで利用しない。Comet Plusが記事の再販売をするというイメージだろう。これなら、出版社から訴えられる心配もない。

検索行動の構造的変化

AI検索の普及により、従来のSEO中心のデジタルマーケティング戦略は根本的な見直しを迫られる。GoogleのAI Overview機能により、34%以上の検索結果でAIによる要約が表示されるようになり、「ゼロクリック検索」が一般化しているという。

Ahrefsの調査によると、AI Overviewが表示されるキーワードでは、オーガニック検索1位のクリックスルーレートが平均で約34.5%低下したそうだ。この現象は特に情報提供型(Know系)のクエリで顕著であり、従来のSEO戦略だけでは集客が困難になりつつある。

この変化に対応するため、新たに「LLMO(Large Language Model Optimization)」という概念が注目されている。LLMOは、大規模言語モデルが回答を生成する際に、特定のブランドやコンテンツが正確に引用・推奨されるよう最適化する取り組みで、「AIに好かれるブランド」になるための戦略的アプローチだ。

従来のSEOがキーワードベースの検索結果上位表示を目指していたのに対し、LLMOはAIの回答テキスト内での言及を目標とし、即時クリックではなく後日の指名検索や購買行動を引き起こす効果を狙う。

広告モデルの危機とメディア業界への影響

AI検索の台頭は、広告収益に依存するWebメディアに深刻な影響を与えている。Similarwebのデータによると、GoogleがAI Overviewsを導入後、ニュースサイトへの有機的トラフィックは26%減少したという。

この変化は特に中小・ローカルメディアに深刻で、大手メディアがAI企業とライセンス契約を締結して新たな収益源を確保する一方、中小メディアは収益機会から排除されているようだ。

プライバシーとデータ保護の新課題

AIブラウザの普及は、ユーザーデータの収集・活用において新たなプライバシー課題を提起する。Perplexity CEOが「ブラウザを構築した理由の一つがデータ収集」と公言しているように、AIブラウザは従来以上に詳細なユーザー行動データを収集する能力を持つ。

一方で、Diaブラウザのようにユーザーデータをデバイス上でローカルに暗号化保存するプライバシー重視のアプローチも登場しており、データ保護とAI機能の高度化のバランスが重要な競争要因となっている。

AIブラウザの台頭は、単なる技術革新を超えて、インターネット利用の根本的な変革を意味している。従来の「検索→クリック→情報取得」という受動的なプロセスから、「対話→理解→実行」という能動的なAIアシスタントとしての機能への転換は、情報行動を大幅に変える。

Perplexity Comet、Google Project Mariner、OpenAI Operator、Diaブラウザなど、各社の独自アプローチは、それぞれ異なるアプローチを取っている。しかし共通するのは、AI技術によってブラウジングを根本的に変えるだろう。

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