「X(旧Twitter)が、独立型メッセージングアプリ「X Chat」のiOS向けベータテストを2026年3月に開始したそうだ。
これまでXのDM(ダイレクトメッセージ)機能は、タイムラインと同じアプリの中に押し込まれている。タイムラインをみながら、ようやくメッセージ機能に辿り着く。そんな煩わしさを解消しようとするのが、今回の独立アプリ化だという 。ただ、これは、イーロン・マスクがぶちあげていた「スーパーアプリ」とは逆の考え方だ。
ベータ版の公開は、わずか2時間で定員1,000人が埋まったそうだ。その後すぐに5,000人へと枠が拡大されたというから、潜在的な需要の高さはうかがえる 。
ネットで公開されているxChatのインターフェースはシンプルで、ログイン画面には星空を思わせる背景が採用されている。アプリ名も「X Chat」ではなく「xChat」と表記されており、リブランディングの可能性を示唆しているかもしれない 。現時点ではメッセージリクエスト機能や認証バッジ、通話機能はまだ未実装だが、いずれも開発中とされる 。
セキュリティという問題
注目すべきは暗号化の問題だ。Xはエンドツーエンド暗号化を謳っているが、セキュリティ専門家の間では「Signalほど信頼できない」という見方がされている 。ビットコインと同様のピアツーピア方式の暗号化を採用しているとマスクは主張し、広告一切なし、データプロファイリングなしと断言している 。ただ、それが技術的に検証されているかどうかは、まだ不透明なままだ。
チャットはXアプリおよびウェブ版(chat.x.com、2025年12月公開)と同期する設計になっており、Androidバージョンも間もなくリリース予定とされる 。
LINEとの戦い
日本市場で考えると、構図は単純ではない。LINEの月間利用者数は約9,700万人、対してXの日本ユーザーは約6,930万人 。数字だけ見れば、まだLINEが圧倒的に優位だ。
しかし、より本質的な問題は使われ方の違いにあるのかもしれない。LINEは、家族、友人、職場などとの、電話番号と紐づいた濃い関係性を確立している。そして、日本のコミュニケーションインフラとして定着している 。一方、XのユーザーはもともとXでつながったゆるい関係性を持つ。X Chatが狙うのは、その中間にある、電話番号を交換するほどではないが、もう少し踏み込んで話したい相手との会話空間だろうか。
普及するか、という問い
LINEを日常的に使っている日本人が、わざわざX Chatに乗り換えることはないだろう。インフラ化したアプリはなかなか置き換わらない。その意味で、X Chatは、付加的なコミュニケーション・ツールの立場を狙うのが筋だろう。
若い世代を中心にLINEのグループ疲れという現象が起きていることも事実だ。電話番号を知らなくてもつながれる、広告もデータ収集も最小限という様な、価値を求めるユーザー層には、X Chatが響く可能性はある。加えて、Grokとの統合によりチャット中にAIを呼び出して情報検索や翻訳ができる体験は、LINEが現時点では提供できない差別化軸になりうる 。
普及の鍵はおそらく、セキュリティ問題の解消と、通話・グループ機能の完成度にある。それが整ったとき、LINEとの競争の土俵に乗れるだろう。
