カラヴァッジョの新たな公開作品

by Shogo

カラヴァッジョで大きなニュースが報道されていた。イタリア政府が3000万ユーロ、約50億円を投じて、カラヴァッジョの肖像画を国家として購入したそうだ。

対象作品は、1598年頃に描かれた「モンシニョール・マッフェオ・バルベリーニの肖像」。右手を差し出し、何かを指示するような仕草で描かれたこの聖職者は、のちに教皇ウルバヌス8世となる人物だ。フィレンツェの個人コレクションに長く秘蔵されていて、一般には見ることができなかった作品だった。それが、2024年にローマで初公開されると、大きな話題になっていた。カラヴァッジョの作品が、新たに公開されるのは、2024年に二度目だったからだ。

カラヴァッジョの現存作品は、説が幾つかるが、およそ65点とされ、そのうちポートレートはわずか3点で、「モンシニョール・マッフェオ・バルベリーニの肖像」は、その一つだ。依頼があったからだろうが、宗教的主題や神話的場面を多く描いた彼にとって、肖像画はきわめて例外的な仕事だった。バルベリーニは当時、著名な芸術の庇護者として知られていた。それが、この肖像画が描かれた理由かもしれない。強力な後援者と画家の関係が、この絵の緊張感を形成しているとされる。視線の鋭さ、光の当たり方の計算は、この緊張感の力学の産物なのだろう。

作品は、ローマのパラッツォ・バルベリーニ美術館、つまり被写体となった一族の邸宅だった建物に移管され、他のカラヴァッジョ作品と並んで展示されている。2017年に見に行ったが、当然のことながら、その時点では、この絵はなかった。また、いつか行く所が増えた。

2021年から2025年にかけてカラヴァッジョをめぐって起きた出来事は、美術界でも、そう何度もあるものではない。

もう一つは、スペインでの出来事だ。2021年、マドリードのオークションに一枚の宗教画が出品される予定だった。カタログには「17世紀スペイン派、ホセ・デ・リベーラ周辺」と記され、開始価格はわずか1500ユーロ。ところが画像を見た専門家たちは驚いた。人物の顔を当てられた強い光、暗闇の中から浮かび上がる肉体、そして劇的な沈黙。あまりにもカラヴァッジョ的だったからだ。誰が見てもということなのだろう

スペイン文化省は競売の直前に販売を差し止める。そこから始まった数年にわたる調査は、絵画の来歴を17世紀のスペイン王室へと導いた。最終的にこの作品は、カラヴァッジョの真作である可能性が極めて高いと認められる。

「エッケ・ホモ」、ラテン語で「見よ、この人を」を意味するこの作品は、ローマ総督ポンティオ・ピラトがキリストを民衆の前に差し出す場面を描いたものだ。2024年以降、プラド美術館の展示室で公開されている。

述べたように、カラヴァッジョにとって肖像画は例外的なジャンルだった。彼の現存作品は約65点。そのうち純粋な肖像画はわずか三点しかないとされる。イタリア政府が購入した「マッフェオ・バルベリーニの肖像」は、その貴重な一つだ。

もう一つは「アロフ・デ・ウィニャクールの肖像」。マルタ騎士団の総長を描いた作品で、鎧の冷たい輝きと人物の冷静な視線が印象的だ。そして三点目が、同じくウィニャクールの従者を描いた若者の肖像。いずれも、宗教画とはまったく異なる空気をまとっている。これは、殺人者として追われていたカラヴァッジョを迎え入れたマルタ騎士団への配慮だったのかもしれない。

マドリードで公開された「エッケ・ホモ」と、ローマに収蔵された「バルベリーニの肖像」。二つのニュースは、同じ問いを投げかけている。カラヴァッジョとは、いったいどんな画家だったのか。

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