ボットのトラフィックが上回る

by Shogo

広告のクリック数は増えているのに売上が全然伸びないという記事を読んだ。トラフィックは右肩上がりだが、実際にカートに商品を入れ、決済を完了した数はほとんど増えていなかったそうだ。

これに関連して別の記事で読んだのは、ボット検出企業のLunioが2025年のデータを分析したところ、世界のデジタル広告費のうち630億ドル以上が無効なトラフィックに消えていたという話だ。購入につながるクリックの8.5%が、実在しない「誰か」によるものだったそうだ。12回クリックのうち1回は幽霊だ。

では、かつてあったクリック詐欺かというと、どうも、そうとは言い切れないようだ。

Cloudflareのマシュー・プリンスCEOが今年3月のSXSWで語った予測は、もう少し根が深い。インターネット全体のトラフィックのうち、2027年にはボットが占める割合が人間を上回る、というのだ。Cloudflareは全ウェブサイトの約5分の1のインフラを担う会社で、その言葉には相応の重みがある。

生成AI登場以前、ボットのトラフィックは全体の20%程度だったそうだ。Googleのクローラーが筆頭で、残りは少数の悪意あるプログラムだった。ところがAIエージェントの普及が、この比率を根底から変えつつある。人間がデジタルカメラを探すとき、訪れるサイトはせいぜい5つか6つだ。AIエージェントが同じタスクをこなすとき、アクセスするサイトは5,000に上ることもある、とプリンスCEOは言う。1,000倍の差だ。

つまり、インターネットは人間のためのものではなくなったのだろう。

「プラットフォームシフト」という言葉を、、彼は使っている。デスクトップからモバイルへの移行と同じ次元の変化だ、と。ただ、モバイルシフトは人間がより手軽にウェブを使うようになるという話だった。今起きているのはそれとは少し異なる。ユーザーの交代と言ってもいいかもしれない。

インフラの問題も無視できない。コロナ禍でYouTubeやNetflixへのアクセスが急増したとき、インターネットの一部は負荷に耐えられなくなりかけた。今起きているトラフィックの増加は、あの時より緩やかだそうだ。それでも、Cloudflareはこの状況に対してAIエージェント専用の「サンドボックス」、つまり使い捨ての実行環境を毎秒数百万個生成する仕組みを構想しているらしい。新しいブラウザタブを開くような感覚で、コードが起動し、タスクが終わると消えるという。

広告の文脈に戻れば、問題はさらに複雑になる。マーケターが信頼してきた指標、それはクリック数、セッション数、エンゲージメント率などは、人間の行動を測定していた。だが、ボットで水増しされるなら、最適化アルゴリズムはノイズを学習し続けることになる。データが増えるほど精度が上がるという前提が、崩れていくかもしれない。何を指標にすれば良いのか分からなくなり、広告の精度がはるかに劣化するだろう。

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