3月10日にカリフォルニア連邦地裁が、PerplexityのAIブラウザ「Comet」がAmazonのパスワード保護されたシステムにアクセスすることを禁じる仮差し止め命令を下した。特にプライム会員のアカウントだ。 しかしわずか一週間後の3月17日、第9巡回控訴裁判所がこの命令を一時停止した。 Perplexityの控訴を審理し終えるまでの間、Cometは引き続きAmazonで、パスワードで保護された領域までユーザーのエージェントとして動き続けることができる、というのが現時点の状況だ。
Perplexityはこの控訴審への申請の中で、Perplexityのショッピング・エージェントをインターネットでもっとも重要なウェブサイトの一つであるAmazonで使用禁止にすることは、会社にとっても消費者にとっても壊滅的な打撃になると訴えた。
事の発端は2024年11月にさかのぼる。AmazonはPerplexityに対してアクセス停止要求書を送り、利用規約違反と連邦および州のコンピュータ詐欺法違反を指摘した。 それでもPerplexityが動きを止めなかったため、Amazonは2025年11月に正式に提訴。CometがGoogleChromeの通常のブラウザセッションに偽装してAmazonのシステムにアクセスしていたと主張した。
Amazonによれば、同社は少なくとも5回にわたって警告を発し、2025年8月にはCometをブロックする技術的な障壁まで設けた。 だがPerplexityは24時間以内にソフトウェアをアップデートして回避したそうだ。これをAmazonは、意図的な隠蔽と呼び、裁判所もその主張を認めた。地裁判事は「ユーザーの許可はあったが、Amazonからの認可はなかった」という論点で仮差し止めを認めたかもしれないと言われている。
本当の争点はどこか
Perplexityの主張は興味深い。Amazonが本当に恐れているのはセキュリティ問題ではなく、AIエージェントが人間のショッパーに表示される広告を迂回してしまうことだ、と指摘している。 ようするに、AIが代わりに買い物をすると、Amazonの広告収益モデルが根底から揺らぐ。消費者には利便性、Amazonには広告在庫の消失という構図で、両者の利益は正面から衝突する。
この視点から見ると、今回の法廷闘争は単なる利用規約違反の話ではない。誰がデジタルショッピングの入り口を支配するかという、はるかに大きな権力闘争の序章だ。この入口を誰が握るかは、インターネットビジネスで繰り返し行われてきた争いだ。Googleが検索トラフィックをコントロールしてきたように、AmazonはAIエージェント時代においても自社エコシステムのゲートキーパーであり続けようとしている。
AIエージェントの可能性と限界
これに対して、Cometのようなショッピング・エージェントは、ユーザーの指示を自動化するだけだ、というのがPerplexityの立場だ。 ユーザーが、これを買ってと頼む行為は正当なアクセスではないか、と。しかし裁判所は、ユーザー個人の許可と、プラットフォーム側の認可は別物だ、という判断を示した。この区別はかなり重要かもしれない。
AIエージェントが本格普及するにつれ、WEBサービス側からの認可の乖離問題は各所で噴出するだろう。旅行サイトでの自動予約、SNSへの自動投稿、医療ポータルへのアクセスなど、いずれも同じ構造を抱えている。
控訴裁判所の最終判断はまだ出ていない。 ただ、どちらの判決が出るにせよ、AIエージェントが経済圏のどこまで踏み込めるかを決める先例になることは間違いなく、法曹界もビジネス界も注目している。
今は、ショッピングが、ブラウザを使って入力する人間から、AIとの対話へと移り変わる過渡期だ。ユーザーの利便性は確実だが、社会とプラットフォームは、どのようなルールを受け入れるべきなのだろうか。
