Netflixは2022年11月に「広告つきベーシックプラン」として広告付きの低価格プランを開始した。その後、2023年4月には「広告つきスタンダード」へとグレードアップされ、現在は日本では月額890円でフルHD画質、同時視聴2台まで可能という充実したサービス内容となっている。
Netflix広告の表示タイミングと仕組み
Netflixの広告つきスタンダードプランでは、主に以下の2つのタイミングで広告が表示される。
- プレロール広告 視聴する作品の本編前に再生される広告(15秒または30秒)
- ミッドロール広告 本編の途中で再生される広告(15秒または30秒)
ほとんどの作品では本編の前と途中の両方で広告が表示されるが、Netflixの新作映画に関しては本編前のみに広告が表示されるという特別な対応がなされるという。
また重要なのは、広告はシーンの切れ目など、作品の流れを遮らないタイミングで表示されるように調整されていることだ。これによりユーザーの視聴体験への影響を最小限に抑えるよう工夫されている。
広告タイミングの視覚的表示
視聴者が広告のタイミングを事前に把握できるよう、Netflix画面下部の進捗バーに黄色い印で広告が表示されるタイミングが示されている。このため、いつ広告が入るのかを事前に確認することができ、心の準備ができる。
さらに、広告が表示されている間は画面右上に「○○秒」というカウントダウン表示がされるため、あとどれくらいで広告が終わるのかが一目でわかるようになっている。
広告の頻度
Netflixの公式発表によると、広告つきプランでは1時間あたり平均して4分程度(一部の情報では4〜5分)の広告が表示されるとされている。これは日本のテレビ放送の6分と比較すると少ない広告量だ。アメリカでは10分も入るので、それよりはかなり少ない。
ただし、実際の広告表示頻度は作品によって大きく異なるようだ。中には広告がほとんど表示されない作品や、全く広告が表示されない作品もあるという。
広告の長さと特徴
Netflix広告の長さは15秒または30秒となっており、テレビCMに近い形式となっている。また、広告配信にはいくつかの特徴的なルールが設けられている。
- 広告に対する視聴者のエンゲージメントを高めるため、広告量が多すぎないよう調整
- 同じ広告の表示回数は1時間に1回、1日3回を上限に設定
- 作品ごとに広告が入るタイミングを調整
- ある広告が配信された直後に、その商品の競合の広告が配信されないよう配慮
2026年から導入予定の生成AI広告
Netflixが2026年から導入を予定している「生成AI広告」は、AI技術を活用して従来の広告よりも番組や映画に自然に溶け込む新しい広告フォーマットだそうだ。従来のテレビCMや動画広告は番組と明確に区切られているが、生成AI広告はNetflixの作品の雰囲気や内容と「融合」するようにデザインされるそうだ。
たとえば、人気ドラマ『ストレンジャー・シングス』のシーン背景に、AIが生成した商品画像やブランドロゴを自然に重ねたり、作品の世界観に合った広告ビジュアルを自動生成して表示する、といったイメージだという。これにより、視聴者に広告を「違和感なく」受け入れやすくすることを意図しているそうだ。これは、見てみないとわからないが、広告の最初の部分は、番組か広告かわからないというようなことが起こるのだろう。これが良いか悪いのか、見てみないと分からない。
Netflixが発表した生成AI広告には、主に以下の2つの新しいフォーマットが含まれる。
インタラクティブ・ミッドロール広告
番組や映画の途中(ミッドロール)で表示される広告で、AIが視聴している作品の内容や雰囲気に合わせて広告クリエイティブを自動生成。さらに、視聴者がボタンを押すことで詳細情報を表示したり、スマートフォンなどのセカンドスクリーンに連動して情報を提供したりする「インタラクティブ」な要素も加わる。
一時停止(ポーズ)広告
視聴中に一時停止ボタンを押した際に表示される広告。Netflixは2024年から一部地域でテストを開始しており、2026年には正式に全世界で導入予定。ポーズ広告もAIが作品に合わせて最適なビジュアルやメッセージを生成し、作品の雰囲気を壊さない配慮も徹底される。
これらの広告は、単なる動画挿入ではなく「オーバーレイ」や「コールトゥアクション(CTA)」ボタン、セカンドスクリーン連動など多彩な表現が可能になる予定だそうだ。
独自の広告配信システム(Netflix Ads Suite)
Netflixは従来、Microsoftの広告配信技術を利用していたが、2024年から「Netflix Ads Suite」という独自の広告配信プラットフォームを開発・導入している。この内製システムにより、高度な広告運用が可能になっている。
- ターゲティング精度の向上 視聴者の興味・関心やライフステージ、趣味など100以上の属性カテゴリに基づいたターゲティングが可能。
- 広告主のデータ連携 広告主が自社のファーストパーティデータをNetflixや外部ツール(LiveRampなど)と連携し、より精度の高い広告配信・効果測定ができる。
- プライバシー保護 クリーンルーム技術(Snowflake、InfoSum、LiveRamp)を活用し、視聴者の個人情報を守りつつデータ分析・活用を実現。
- 多様な購入方法 プログラマティック広告取引やプライベートマーケットプレイス経由で、柔軟な広告購入が可能。
今後の展望
Netflixの広告部門トップは「会員はミッドロール広告にも番組や映画と同じくらい注目している」と述べており、AI広告によって視聴体験と広告価値の両立を目指しているそうだ。生成AI広告は、単なる「邪魔な広告」ではなく、作品世界に溶け込むことでユーザー体験を損なわず、むしろ「新しい発見」や「関連性の高い情報提供」につなげる狙いがあると説明している。これは、言うは易しで、広告が広告であることは変わらず、「邪魔な広告」である。これが、どの程度緩和されるのかは、新しい広告フォーマットが導入されるまではわからない。
Netflixは、広告による収益源の多様化と収益の増大を目指して、生成AI広告などを導入するのだろうが、会員からどのように評価されるのだろう。こればかりは、AIには予測できない。