ChatGPTの急増と広告市場の変化

by Shogo

OpenAIのChatGPTは2024年12月時点の一日10億プロンプトから、わずか8か月で2.5倍の25億プロンプトへと利用が急拡大したと報道されている。

その利用の勢いはGoogle検索にも肉薄しつつある。Google検索が1日あたり約140億クエリを処理しているため、ChatGPTは既存の検索エンジン業界の中でも存在感を強めている。

このような急激な変化は、Alphabet(Google親会社)にとって脅威となっている。同社の収益の約7割以上が検索広告を中心とした広告ビジネスに支えられているからだ。2025年第一四半期の決算では、総売上902億ドル中668.9億ドルが広告収益で、検索広告がその大部分を占めている。

Googleは、検索がインターネットの入り口になっていることを武器に、Webのゲートキーパー的地位を維持してきた。しかし、AIチャットによる「新しい質問方法」が検索行動を変化させつつある今、検索エンジン主体のビジネスモデルの限界も来てるのかもしれない。

実際、2024年以降にGoogleが導入したAI Overviews(AI要約)は、検索結果ページに従来のリンク表示の上部へ生成AIがまとめた回答を大きく表示する。これにより多くのユーザーがリンクをクリックすることなく、ページ上で疑問を解決してしまう傾向が強まっている。

米国で行われた調査では、AI要約が表示された場合の1位サイトのクリック率が従来の半分以下まで低下し、特にニュースメディアなど外部サイトへの送客トラフィックが20〜40%減少するケースも出ている。Google自身はAI検索で検索全体の回数がむしろ増加したと発表しているが、サイト運営者やメディアからは、AI型検索の普及がWeb全体のエコシステムを損なうのではとの懸念も高まっている。長年の広告を前提としたウエブメディアのビジネスモデルが危機に瀕している。

この流れに対し、AlphabetはAI関連領域への巨額投資を維持しつつ、AI検索内への広告枠拡充やGeminiの広告活用による新収益モデルの開発を急いでいるという。2025年に入り、AI OverviewsやAI Mode(会話型検索モード)内に検索広告やショッピング広告を表示し、新たな広告面としてユーザーとのAI対話の中へ広告を直接組み込み始めている。また、Geminiによる自動生成機能でキャンペーン用の広告見出しや画像を効率的に量産するサービスも展開され、広告運用現場は自動化・最適化の度合いを一段と高めている。

しかし、広告としての成果はまだ見通しが不透明だ。AI要約の普及がクリックスルー率の低下と情報の囲い込みを加速するなか、AI内広告が本当に従来並みの広告価値を発揮できるのか、中長期的には不透明だ。もしも今以上にユーザーの情報収集行動がChatGPTや他の生成AIチャットへ大規模に移行すれば、Google検索自体の広告在庫や予算配分の見直しも必至となる。

また、マーケティングの現場ではすでに、従来型のSEO対策だけでは立ち行かなくなってきている。AI要約部分へ自社情報が引用される確率を高める権威性の確立や、生成AIに有利な構造の情報コンテンツ設計といった新たな戦略への転換が不可欠となってきた。また、検索キーワード単位の最適化よりも、ユーザーがAIに尋ねる文脈や意図を汲み取り、AI対話内で自然に広告を届けられる露出の作り方が問われるようになっている。

今後のデジタル広告・Webマーケティング分野では、キーワードを工夫したコンテンツ制作でクリックを集めるという従来型モデルから、AI検索や対話型AIにおいて回答の中で露出を確保するモデルへと進化が加速すると考えられる。企業にとっては、単にGoogleだけに依存せず、多様なAIチャネルや生成型検索に対応した情報発信・集客体制を再設計することが成功のカギとなるだろう。

つまり、ChatGPTのプロンプト急増と、それに伴うAI検索体験の広がりは、時インターネットの使い方を根本的に変え始めている。それは、検索エンジン最大手Alphabetの収益構造に影響を及ぼし、Web広告市場の再構築に向かいつつある。

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