驚くようなニュースを読んだ。それは、2025年9月30日にAOLのダイヤルアップサービスが終了するということだ。驚いたのは終了ではなく、今までまだサービスを続けていたということだ。
その昔、AOLを使っていた頃は2400kのモデムでダイアルアップしていたことを思い出す。AOLを使い始めたのは1990年だから、かなり初期のユーザーだった。メアドは、shogo@aol.comを使っていた。当時は、読んでいたMacWorldなどの雑誌に、接続用のCD-ROMがついていた。
AOLの成功の最大の要因は、そのマーケティング戦略にあっただろう。AOLは、雑誌の付録や郵便物として、無料のCD-ROMを大量に配布した。このCD-ROMをパソコンに入れるだけで、簡単にAOLのソフトウェアがインストールでき、数時間分の無料接続が可能だった。当時は、GUIという言葉を知らなかったが、Macのようなグラフィックなインターフェイスで、AOLのパソコン通信が利用でき、そこからインターネットも利用できた。ただし、その頃には一般的なサイトはほとんど存在しなかったから、多くはAOLの提供するサービスを使っていた。
ダイヤルアップ接続は従量課金制だったが、しばらくすると定額制プランになった。だから時間を気にせずに楽しむことができるようになった。
AOLとは、幾つかの広告プロジェクトについて検討を重ねたので、ワシントンのダレス空港の近くにあったAOLを定期的訪問していたことも思い出す。
今回調べてみると、AOL(America Online)は、1985年に前身のQuantum Computer Servicesとしてスタートし、1991年にAOLへと社名を変更した。その間の1989年にMacintoshにおいてGUIを用いた専用ソフトで接続する「America Online」サービスを開始している。
その後に2000年のタイム・ワーナーと合併した。当時の時価総額はAOLの方がはるかに大きく、事実上AOLがメディアの巨人を買収する形だった。これは「世紀の合併」と称され、AOLのコンテンツとタイム・ワーナーの豊富なコンテンツ資産を組み合わせることで、メディアとインターネットの融合を成し遂げようとする壮大な試みだった。
しかし、この合併は後に「史上最悪の企業合併」とまで言われることになった。合併後、AOLは経営権を掌握したものの、ブロードバンドの普及という時代の変化に対応しきれず、ダイヤルアップ接続のユーザーは減少の一途をたどる。合併当初に期待されたシナジー効果はほとんど生まれず、企業文化の衝突も相まって、合併は失敗に終わる。2009年にはタイム・ワーナーから独立した。
1995年ごろからインターネットが普及するようになると、AOLのようなコンピュータ通信は役割が限定され、単純なインターネット接続業に限定されるようになる。それでも、1990年代の終わりにブロードバンドの普及が進むまでは、AOLのようなダイヤルアップ接続は、「インターネットへの窓口」だった。だが、技術の進化とともにその役割を終えていた。TWとの合併もコンテンツと通信の融合という旗印はあったが、中心はTWケーブルのブロードバンド事業であったろう。
そして、AOL自体も、TWとの分離後は、幾つかの転機があり、今は独立した会社ではない。AOLのダイヤルアップサービスの終了で、また、一つの時代が終わった。