一昨年、車の未来についての論文を書くことがあって、車の未来の形について考えた。その際に思ったのは、未来の車とは、タイヤのついたスマホであると言うことだ。
車とは移動の手段であるが、自動運転が当たり前になると、車は同時に移動中に仕事や遊びをする情報端末になるということだった。
ソニーとホンダが組んで電気自動車を作る。その会社、ソニー・ホンダ・モビリティ(SHM)が、CESでプロトタイプを発表した。「アフィーラ(AFEELA)」と名付けられた、その車は、まさに走るスマホだ。
SHMによれば、アフィーラは移動空間であると同時に、エンターテイメント空間として拡張されると言う。このために車にEpic GamesのUnreal Engineが組み込まれて、表示の部分を司る。
ニュースで見た、SHMのプレゼンテーションには、室内に設置されたスクリーンに、“Horizon Forbidden West”が表示されていた。PS5のハードウェアも組み込まれるそうだ。PS5のハードウェアを使って、Unreal Engineが社内外の画像表示をコントロールするようだ。
アフィーラのプロトタイプには、車内外に45のカメラやセンサーが設置されており、道路状況やドライバーを常にモニタリングして事故を回避するとされている。さらに、車の内外にメディアバーと呼ばれるLEDを使ったディスプレイが組み込まれており、ロゴや各種の情報が表示されるそうだ。車外にディスプレイを持つ車は、発売された車としては初めてではないだろうか。
これが、全てUnreal Engineで生成される映像が表示される。カメラの画像に関連情報が表示されるAR画像を作り出すのだろう。当然、各種情報の3D表示などは簡単なことだ。だから、PS5はゲームだけに使われるのではない。これはまさに走るスマホと言うイメージそのままだ。
またアフィーラの頭脳としては、Qualcommの最新SoC「Snapdragon Digital Chassis」を採用している。自動車としては、F1までの実績のあるホンダの会社だから、走行性能は問題がない事は明らかだ。そこに、ソニーやEpic Games、Qualcommが加わって最強のチームと言える。そこで、少し考えるのが、ホンダは自社だけでこれが実現できなかったということだ。やってできないことはないと思う。当然、当初はそう考えただろうが、ソニーと組んだ方が得策と経営判断をしたのだろう。
後は、テスラなどに対抗して、ソニーの持つ技術やコンテンツで、Unreal Engineを使って、どこまで車の内外のディスプレイを活用した3DやARの表示が実用的かつ面白くできるかどうかが、この車のブランドイメージを決定する。走るスマホだけでは他社と変わらない。
2026年の発売で2025年から予約が始まるそうだ。その時までに今回のプロトタイプがどのように実車として生まれ変わるのかが楽しみだ。また、ソニーやEpic Gamesのコンテンツ、画像や映像がどう生かされるのか。