Netflixは、他の定額動画配信サービスがスポーツのコンテンツ獲得に力を入れていることに対して否定的であった。2022年12月にも共同CEOが、記者会見で、大きなスポーツイベントをレンタルして、高額の放送権料を払ってNetflixのビジネスが成功する可能性は無いとして、スポーツ中継に参入しない考えを明確にして、スポーツ無しで、今の2倍に成長する考えを明らかにしている。
Netflixが選んだ道は、スポーツのライブ中継ではなく、スポーツのドキュメンタリー番組であった。F1のモーターレースのドキュメンタリー番組「Drive To Survive」やPGA Tourの舞台裏のドキュメンタリー「Full Swing」という、ライブ中継ではないスポーツコンテンツを制作している。
しかし、Netflixが初めてのスポーツイベントのライブ中継を行うと報道されている。
Netflixは、スポーツ中継に参入を試みて、放送権の入札に参加を検討したようだ。だが、放送権料が高額のために断念したと言われている。今回ライブ中継を行うのは、サッカーや野球といったスポーツではなく、F1やPGAツアーのドキュメンタリーを制作している関係から、F1やゴルフの関係の有名人が参加する。ゴルフイベントの中継と言うささやかなものだ。
Netflixにライブ配信の実績がないわけではない。2023年3月にクリス・ロックのコメディ・ショートをライブで配信している。しかし、2回目は技術的なトラブルでライブ配信にはならなかったようだ。
現時点ではまだ交渉中のようだが、この有名人が参加するゴルフトーナメントはラスベガスで秋に開かれる予定になっている。このトーナメントのライブ中継を行うことで、今後Netflixがスポーツのライブ中継に参入する可能性があるのではと推測されている。
競争の激しい定額配信サービスでは、スポーツコンテンツが契約者獲得の目玉コンテンツなっている。これは定額映像配信サービスだから、起こっていることではなく、以前より無料・有料を問わず、テレビ放送では、スポーツコンテンツがその放送局の目玉となってきた。その理由は、スポーツコンテンツは、リアルタイム性が要求され、ライブでしか楽しめないからだ。この一回性を独占して放送することにより視聴者を獲得することにつながってきた。
Amazon Prime Videoは、2017年からスポーツのライブ中継に参入して、現在はNFLのThursday Night Footballの独占権を持っているし、Apple TV+もMLSの独占放送権を獲得している。
今回の有名人のゴルフトーナメントの放送権料は、NFL やMLSの放送権料に比べれば、何桁も違うような金額であることは間違いない。しかしそれでも、スポーツのライブ中継を行わないと宣言していたNetflixが、マイナーとはいえスポーツ中継への参入と考えて、今後メジャーなスポーツのライブ中継の放送権獲得に乗り出す可能性があると見ている人が多いようだ。
Netflixには前例があり、広告は絶対に入れないと創業以来言ってきたが、その発言を翻して、昨年より広告付きプランを導入している。
Netflixは、2024年の第4四半期の新規加入者は760万人だったが、 2023年の第1四半期の新規加入者は、175万人にとどまった。これは格安の広告付きプランを導入して新規契約者の獲得を目指したことからすれば、期待はずれだったのかもしれない。しかし、それでも世界で2億3250万人の契約者がいるNetflixは定額映像配信サービスの王者である事は間違いない。
2024年のコンテンツ投資額は170億ドルと言う巨大なもので、これはこの数年、毎年同じ金額が出されている。このコンテンツ予算がスポーツ中継に回れば、またスポーツの放送権料は高騰することになる。
しかしながら、現時点ではアメリカのメジャースポーツはすでに放送権料の契約は終わっている。次のサイクルまで少し時間がかかるのでNetflixは、今回のゴルフトーナメントのような小規模なイベントの中継を行っていくのかもしれない。
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