北極の氷の記事を読んだ。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表したデータによれば、2030年代には北極圏の夏の海氷がほとんどなくなる可能性があるそうだ。この研究を行った研究者によれば、海氷融解の90%は、人為的な地球環境温暖化の結果で、今から厳しい温暖化ガス排出政策を行っても、北極圏の夏の氷を救うにはもう手遅れだと言うことだ。
また、アメリカ国立雪氷データセンター(このような役所があることを初めて知ったが)のデータによれば、北極圏の海氷は10年ごとにほぼ13%ずつ減少してきている。そして、2020年には、1979年の記録開始以来、最も多くの海氷が融解したそうだ。しかも、この傾向は悪化しており、今年は1月2月の北半球の冬の氷も歴史的な低水準の面積を記録したと言う。
北極圏は他の地域よりも温暖化が早く進むそうだ。北極地域では、大気の対流が弱くなり、低気圧が停滞しやすくなり、暖かく湿った空気が北極地域に運ばれ、氷の融解を促進すると説明されている。
この結果、北極圏は他の地域よりも4倍も早く温暖化し、ICPPが予測したスピードの2倍での速さで氷が失われている。
公開されたデータによれば、1979年から2020年までで、北極の氷の面積は40%も減少している。この40%と言う数字で、温暖化の影響が北極圏で、いかに深刻かがよくわかる。
北極の氷の減少は、地球環境全体に大きな影響を与えるという。第一に、氷の減少により海水面が上昇する。今後、沿岸部の生態系や人々の生活に重大な影響が出ることが予想さることは、以前から指摘されていることだ。
そして第二に、北極圏の氷の減少は地球の気候システムに、より大きな影響を与えるのだそうだ。考えたこともなかったが、氷は太陽光を反射して、地球を冷却する効果があるという。その氷が減少すると、地球の表面に吸収される光の量が増えて、地球全体の気温が上昇する。これがさらに温暖化を推し進める。氷には、そのような効果があったのだ。
第3に、北極の氷の減少は、海洋の海水の循環の変化を起こし、その結果、生態系に影響が多くの場所に現れる。
北極の氷が減少するのは、ICPPの研究者の発言のように、人為的な温暖化ガスの増加が、北極という温暖化が進みやすい場所で、最も早く影響が現れているだけで、他の地域も同様だ。これは、さんざん議論されているように、化石燃料の使用増加、工業活動の活発化、森林伐採、生活における電気の使用量の増加など、多くの原因の複合的な結果だ。パリ協定で温室効果ガスの排出目標が決まっているが、今回のICPPの研究者の発言のように「もはや手遅れ」というのがこわさを感じる。
それは、一旦海氷の融解が進むと、融けた海水が温まり、さらに氷を溶かし、その結果で太陽光の吸収が進むとというように加速的に温暖化が進むからのようだ。
化石燃料から再生可能エネルギーのシフトが求められているが、これはコストの問題もあり、簡単に成し遂げられる課題でもない。このような状況の中で、原子力発電の議論が始まってしまうかもしれない。しかしながら、ロシアの侵略によって起こったエネルギー危機でも、ドイツでは、原子力発電に引き返すと言うような検討すらされていない。これは、意志の問題だ。多くの政治家や経済人は、目先の利益に惑わされ、将来を考える意志を持ち合わせていないように見える。
今日も暑くなりそうなので、もちろんエアコンは使うし明かりも必要だ。便利で快適な生活とこの地球環境のバランスとはどこにあるのだろう。東日本大震災の後の夏はエアコンなしで過ごした。あのときは今より若かったが、つらかった。
一人一人が考えなければない問題だが、暑いと忘れてしまう。だから、北極の氷が40%も減少していることを、もっとたくさんの人を知るべきだ。