RAG機能を持つAmazonのAI

by Shogo

Amazonが、OpenAIのChatGPTに対抗する独自の一般ユーザー向けAIチャットボット「Metis」を開発中であると報道された。このチャットボットサービスは今年後半に発表される可能性があるという。メジャーなAIサービスがいくつ登場したか分からなくなってしまった。誰も彼も生成AIチャットボットだ。

「Metis」はウェブブラウザ経由でアクセスでき、Amazonの新しい大規模言語モデル「Olympus」によって動作する。Olympusは、Amazonの既存の公開AI モデル「Titan」よりも高性能なモデルだと言われている。Olympusは、パラメータ数が2兆と非常に大規模なモデルでOpenAIのGPT-4の1兆を上回るそうだ。

Metisは、テキストと画像ベースで回答し、情報ソースへのリンクを共有したり、フォローアップの質問を提案したり、画像を生成したりできるとのこと。情報ソースへのリンクを共有は、良いことだ。

Amazonは、Metisに「retrieval-augmented generation (RAG)」と呼ばれるAI技術を採用し、最新の株価など、リアルタイムの情報提供を可能にするようだ。RAGは、情報検索と自然言語生成を組み合わせることでAIを大きく変える可能性のある技術だ。

GTP-4oのような大規模言語モデル(LLM)は膨大なテキストデータから言語の統計的パターンを学習することで、自然な文章を生成できる。しかし、LLMの知識は学習時点で固定されており、最新の情報に追従できないという課題がある。そこで登場したのが、RAGだ。RAGは、LLMによる文章生成に情報検索を組み合わせることで、より正確で最新の知識に基づいた文章生成を可能にする。

RAGの仕組みは以下の通りだ。

  • ユーザーからの質問をLLMが受け取る
  • 質問に関連する情報を外部のデータベースから検索する
  • 検索で得られた情報をLLMに入力する
  • LLMは外部情報と自身の知識を組み合わせて回答を生成する

RAGでは、質問に対して外部の情報源を引用しながら具体的に回答することができる。これにより、LLM単体で回答するよりも正確性が向上し、情報源が明示されることで回答の信頼性も高まる。生成AIチャットボットのハルシネーションの問題のため、今後は外部情報を参照するRAGが中心になってゆくと思っている。既存サービスでは、Perplexityだが、これと比べて使い勝手が良いか、性能がいいか比べられるだろう。

Amazonは、以前よりAIを開発したり、Anthropicに出資したりしていたが、いよいよ自前の一般ユーザー向けサービスを持つことになる。Amazonは昨年、企業向けの生成AI搭載アシスタント「Amazon Q」をリリースし、2月には新しいAIショッピングアシスタント「Rufus」を発表するなど、ここ1年でAmazon Web Servicesを中心に生成AIに取り組んできた。Metisの登場により、Amazonの包括的なAI戦略が明らかになってきた。

Metisの発表の中で特徴的なことは、旅行の手配や家電の操作など、複雑なタスクを自律的に実行する「AIエージェント」としての活用を想定していることだ。この点で、ユーザーとの対話を通じた知識共有やサポートが主な用途のChatGPTとは違う。RAG機能を含めて、ChatGPTよは違う用途を想定しているのだろう。

また、MetisはAmazonが近日中にリリース予定の新しい音声アシスタント「Remarkable Alexa」と一部のインフラを共有しているという。このことから、AmazonのAIチャットボットと音声アシスタント製品間の連携が行われるものと見られる。

Metisの登場は、AIチャットボット市場の競争がますます激化する。このような状況で、iPhoneによる普及を目指したOpenAIの戦略の正しさが証明された。ますます、競合の数が増え、競争は激しくなってゆく。高度な機能と能力を備えたAIアシスタントの登場を期待できるようになっており、ユーザーとしては選択肢が増えるのは良いことだ。

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