Perplexity AIによるChrome買収は実現するか?

by Shogo

Googleの独禁法裁判の過程で出てきたGoogle Chromeの分割の話で、Perplexity AIが、その買収にOpenAIとともに手を挙げた。普段からよく使っているPerplexity AIがGoogle Chromeを所有することでさらに使い勝手が良くなるかと多少期待をしている。たくさん誕生しているAIスタートアップの中ではPerplexity AIが最も注目に値するとかねてから思っているので、状況をまとめてみる。

Perplexity AIは、AI検索とエージェント市場において、Googleなどの巨大企業に挑戦するイメージを強調してきた。IBMに挑戦する70年代のAppleのイメージだ。

当初は引用付きの直接的な回答を提供する「AIアンサーエンジン」として差別化を図ったが、現在はユーザーに代わってタスクを実行できる「AIエージェント」プラットフォームへの移行を加速させている。その戦略は、デバイスメーカーとの提携などの積極的な配信パートナーシップ、独自のブラウザ「Comet」の開発、そしてアクション指向のAI機能への注力という重要な柱に基づいている。

Perplexityは、戦略の焦点を具体的なアクションを実行する「エージェント」の構築へと移行させている。基本的なAI Q&A機能がコモディティ化する中で、情報検索からタスク実行へと機能を高度化することで、長期的な競争優位性を保つための戦略となっているようだ。

Perplexityは、iOSアシスタントで、このエージェント構想の初期段階にあり、Apple製アプリやYouTube、Uberなどのサードパーティアプリと連携して特定のタスクを実行できる。Perplexity AI は、Siriが不得手とする複雑なタスクにおいて、Perplexityが優位性を持つと主張しており、単なる優れたアンサーエンジンではなく、現代のデジタルタスクに対応できる「有能な」アシスタントとして自らを位置づけようとしている。これに対して、AppleがOpenAIと組んで、Apple Intelligenceで対抗しようととしているのが今の状況だ。

Googleなどの不動の地位を確立している巨大企業に対抗するため、Perplexity AIはOEMや通信事業者とのパートナーシップ、そして自社ブラウザの開発という多面的なアプローチでユーザー獲得を目指している。Motorolaとのプリインストール契約は重要な一歩であり、日本ではSoftbankと組んでいる。

今回のGoogleに対する司法省の独占禁止法裁判が、この戦略を後押ししたそうだ。しかし、プリインストールは第一歩に過ぎず、デフォルトのアシスタントの地位を巡る戦いは依然として厳しいものだろう。iOSに組み込まれるChatGPTに比べれば、Perplexityは僅かなものだ。

この状況の打開のためか、Perplexityは、MacおよびWindows向けに独自のブラウザ「Comet」をリリースし、将来的にはモバイル版も提供する計画を発表した。これは、AIエージェントを構築するための最適なプラットフォームを自ら作り出すためであり、現在のモバイルOSの制約を回避し、サードパーティサービスへのアクセス、ページスクレイピング、推論、アクション実行を可能にする。Cometは単なるブラウザではなく、PerplexityのAIエージェント専用の実行環境としての役割を担うことが期待されているのだそうだ。

Cometブラウザの開発は、Perplexityが目指すAIエージェントの実現に向けた中核的な戦略だ。ブラウザ環境であれば、ユーザーがログインしている様々なウェブサービスにクライアントサイドでアクセスし、ページ情報を解析し、AIが推論を行い、ユーザーに代わって具体的なアクションを実行することが可能になる。Perplexityは、ブラウザがアクション実行に最適な場所であると強調しており、ウェブそのものをAIエージェントのための普遍的なAPIとして扱えると考えている。

Perplexityは、AI検索およびエージェント市場において、Google、OpenAI、Microsoftといった巨大テック企業との厳しい競争に直面している。ここで、PerplexityはGoogleの独占禁止法問題の活用、アクション指向エージェントへの注力、そしてブラウザを通じて得られる広範なコンテキストに基づくパーソナライゼーションという独自のアプローチで対抗しようとしているようだ。

その過程で、Google Chromeの買収は重要な一手になる可能性がある。Perplexityは、真のパーソナライゼーションには、閲覧履歴や購買履歴といった広範なコンテキストが必要であり、ブラウザこそがそのアクセスに最適なツールであると主張しているからだ。

Perplexityは、設立からの短期間で目覚ましい成長を遂げており、2024年半ば頃には月間アクティブユーザー約3,000万人、月間約6億件のクエリを処理している。総資金調達額も数億ドル規模に増加しており、これは市場からの高い期待を示している。しかしながら、まだ月間約6億件は、Googleの推定クエリ量の約0.14%にしかすぎない。現時点での力量の差は大きい。

Perplexityの戦略は、チャネルの確保、AI開発・運用コスト、パブリッシャーとの関係など、多くの重大な課題に直面している。GoogleやMicrosoftのプラットフォーム支配力に対抗するための戦略的なパートナーシップや、規制当局からの支援、魅力的な製品が必要だろう。だが、チャネルの拡大は依然として困難であり、AI開発・運用には莫大なコストがかかる。また、モデル訓練に必要なウェブデータと著作権者の権利とのバランスも重要な課題だ。これらの課題に対し、Perplexityは複数の戦線で同時に戦う必要がある。、

Perplexityの長期ビジョンは、Cometブラウザの開発にとどまらず、OSレベルでの統合を達成することにあるのだそうだ。PerplexityのAravind Srinivas CEOは、ブラウザは制約が多く、OSこそが究極の目標であると述べている。これは、Perplexityが段階的に戦略を進めており、最終的にはOSレベルでの深い統合を通じて、AIエージェントの能力を飛躍的に向上させることを目指していることのようだ。だが、これは巨大な夢であり、PerplexityがOSに手を加える未来は、想像できない。

Perplexity AIは、AIによる情報アクセスとタスク実行の未来を形作る上で、巨大企業に挑戦するという野心的な目標を掲げている。その戦略の中心は、AIエージェントプラットフォームへの進化であり、OEMとの提携や独自ブラウザCometの開発を主要な手段としている。その文脈では、Perplexity AIによるGoogle Chromeの買収が資金的に可能なら、新たなレベルに進むのではと期待させる。ともかく、検索エンジンとして、最も使っているPerplexityが、更に使い勝手が良くなることを期待している。

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