Prime Videoの広告量増加

by Shogo

Prime Videoの広告量が2025年に大幅増加したという記事を読んだ。最近は、Prime Videoをあまり見ていなかったので、これには気がついていなかった。記事によると、2024年1月に広告付きプランを導入して、わずか18ヶ月で広告量を倍増させ、1時間あたり4〜6分の広告を表示するようになったそうだ

Prime Videoが、アメリカで2024年1月に広告付きプランを導入した際、Amazonは視聴者への配慮から1時間あたり2〜3.5分という広告でスタートした。しかし、この急激な広告量の変化は、Amazonの広告事業の戦略を反映しているのだろう。

Amazonの広告事業は驚異的な成長を遂げており、2025年第1四半期のデジタル広告売上は139億2,000万ドルに達し、前年同期比19%の成長を記録した。これは、GoogleやMetaを上回る成長率であり、米国のデジタル広告市場でGoogle、Metaに次ぐ第3位の地位を確立している。eMarketerの予測によると、Amazonの広告収入は2025年までに670億ドルを超える見込みだ。

Amazonの収益源といえば、Eコマース(オンラインストア)とAWS(Amazon Web Services)が2大稼ぎ頭だった。しかし、今や「広告」はこれらに次ぐ第3の柱として重要になっている。

Amazonが発表した2025年第1四半期の決算では、広告事業の売上高は前年同期比19%増という高い成長率を記録した。2023年10-12月期のデータを見ても、広告事業の成長率は前年比で約27%に達しており、他の事業を圧倒している。広告事業は利益率が非常に高いとされ、Amazon全体の収益性を向上させる上で不可欠な存在となっている。

この成長著しい広告事業にとって、月間アクティブユーザー数が数億人に達するPrime Videoは、未開拓の広大な「広告在庫」の宝庫なのだ。

テレビデバイスでインターネット経由の動画コンテンツを視聴する「コネクテッドTV(CTV)」の広告市場は、世界的に急拡大している。従来のテレビCMと異なり、視聴データに基づいた精緻なターゲティングが可能なため、多くの広告主が予算をシフトさせている。

日本市場では、2025年4月8日からPrime Videoで広告が正式に導入された。日本国内の全プライム会員が対象となり、映画やドラマなどの視聴時に広告が挿入されるようになっている。それまでは、Amazonプライム会員(日本では月額600円または年額5,900円)であれば、追加料金なしで広告非表示のPrime Videoを視聴できた。しかし、基本プランに広告が導入され、広告なしで視聴を続けたいユーザーは、月額390円(税込)の追加料金を支払う必要が出てきた。

日本のCTV広告市場規模は2021年の約344億円から、2025年には1,695億円に達すると予測されており、成長市場である。この有望な市場では、すでにNetflixが「広告つきスタンダードプラン」(月額890円)を導入し、熾烈な競争が始まっている。Amazonとしては、このCTV広告市場で競合に遅れを取るわけにはいかない。世界有数のプライム会員基盤を持つPrime Videoを最大限に活用し、市場のリーダーシップを握ろうとするのは必然的な戦略と言えるだろう。

日本での広告仕様

日本版Prime Videoでは、以下の3つのタイミングで広告が表示される

  • プレロール広告(動画再生前)
  • ミッドロール広告(動画再生中)
  • ポストロール広告(動画再生後)

さらに、一時停止時に表示される「ショッパブル広告」も導入予定で、視聴者が画面上の商品をそのままカートに追加できるAmazonならではの仕組みも計画されているようだ。

他社ストリーミングサービスとの比較

Prime Videoの広告量増加により、同サービスは他のストリーミングプラットフォームの中間層に位置するようになった。アメリカでの主要ストリーミングサービスの広告量比較は以下

  • Netflix: 1時間あたり約2.6%(最も少ない)
  • Prime Video: 1時間あたり4〜6分
  • Disney+: 視聴時間の13.4〜16.6%
  • Hulu: 視聴時間の約12.7〜12.9%
  • Max: 視聴時間の約6.8〜8.9%

ストリーミングサービスの広告量は、アメリカの地上波テレビよりもはるかに少ない。従来のアメリカのテレビでは1時間あたり13〜16分の広告が一般的で、日本では6分。Prime Videoの広告量は、日本の地上波テレビと同等である。

広告量の増加により、Amazonは広告主により多くの在庫を提供できるようになった。これにより、CPM(1,000回表示あたりのコスト)の低下が期待され、広告主にとってより効率的な広告購入が可能になる。

ターゲティングの精度

Amazonは豊富な購買データを活用した高精度なターゲティングを提供しており、広告主は商品を検索しているユーザーに対して効果的にアプローチできる。例えば、自動車のアクセサリーを検索しているユーザーに対して自動車メーカーが広告を出稿することも可能だ。これは、地上波テレビでは不可能な特長だ。

Prime Videoの広告量増加は、ストリーミング業界全体の変化を示す重要な指標だ。Amazonの広告ビジネスは今後も成長が見込まれ、特に日本市場での展開により、アジア太平洋地域での広告収益拡大が期待されるだろう。日本は、世界3位の広告市場であり、Amazonにとっても重要市場だ。

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