新しい地図が発表されている。そう書くと、タレントの事務所のような名前だが、今までの地図の欠点を補うための、新しい発想で考えられた地図だ。
見慣れた、地球を真横から見て横長になって広げた地図と違って、地球を南極と北極の両方から見た円形の地図を2つつなげたものだ。使い方によっては、この円形を切り抜いて、裏表にしてひっくり返して見ると言う使い方もすると言う。この地図で、今までの一般的な地図の欠点がカバーされている。
今までの地図というと、メルカルト図法が一般的だ。子供の頃から、この地図を最も見てきた。この地図の形式は古く、1569年に現在のベルギーで、地理学者ゲラルドゥス・メルカトルが発表したものだ。この地図の欠点は高緯度になると、面積や距離が拡大しされてしまう点だ。例えば高緯度のグリーンランドは実際の面積よりも17倍に拡大されていると言う。ただ赤道に近いエリアは、実態から大きくは乖離していない。
この欠点を補うために考えられたのが、ヴィンケル図法で、オズワルド・ヴィンケルによって1921年に考案された。地図自体は横に広がった楕円型になっており、緯線は湾曲している。このために高緯度であってもメルカルト図法ほど拡大はされない。この地図がメルカルト図法の欠点を補うので比較的によく見かけるようになった。ただ、それでも程度の問題で、高緯度の歪みが解消されたわけではない。
この高緯度で歪みが生じる欠点を改良しようとしたのが、最近リチャード。ゴット氏が考案した新しい地図だ。(上の画像)この地図は、写真で見るように2つの円形が隣り合っており、我々が見慣れた長方形や楕円形で表示される地図とは違っている。南極の方向と北極の方向から見た2つの円形である。これにより高緯度の地域の面積が正確に表示される。
この地図を見て思ったのは、ロシアと北米が北極を挟んで向かい合っており、20世紀の冷戦の際の対立がイデオロギー的なものだけではなく、位置関係からもよく理解される。
この形で、双方に大陸間弾道弾を設置して対立していたわけだ。また、この新しい地図は、高緯度の面積が正確と言うだけではなく、位置関係が正しく表示されているので、北半球と南半球の距離が、この地図から正確にわかると言う長所もある。ただ、欠点は、北半球と南半球をバラバラに見ることになるので、世界を一目で見ると言う事はできない。
このゴッド氏の新しい地図で見ると、日本はやや大きく見える。実際、日本はそう小さな国ではなく、世界の国別面積の順位で言うと62位である。ドイツ、ポーランド、イタリア、イギリスなどのヨーロッパの国よりは広い。従来の地図で言うと、高緯度のヨーロッパは拡大されているので、ヨーロッパの国々はやや大きく見えるのだ。ゴッド氏の新しい地図は、実態を表示していると言える。
どの地図にしても長所と欠点があり、それは地球と言う3Dの物体を2次元に表示することからくるので、目的に合わせて使い分けるのが良いのだろう。
見慣れると言う問題もあるので、個人的にはメルカルト図法が1番しっくりくる。だが、北極経由の海上輸送の重要性が増しているので、距離や位置関係の把握のためにゴッド氏の地図がより多く使われるようになるとだんだん見慣れてくるのかもしれない。