Spotifyの「Messages」機能

by Shogo

Spotifyが、新たに「Messages」機能を発表した。かつて2017年にも同様の機能を提供していたが、当時はユーザー数が今ほど多くなく、利用は限定的だったために姿を消していた。それから8年、月間アクティブユーザー数が6.96億人に拡大した今、メッセージングの機能の機は熟したのかもしれない。

かつては外部SNSやメッセージアプリを経由して行われていたコンテンツの共有体験を、アプリ内で完結させることで、Spotifyは音楽を通じてコミュニケーションの分野に参入しようとしている。

新機能「Messages」は、16歳以上のすべてのユーザーが利用でき、プレミアム会員だけでなく無料プラン利用者にも開放される。楽曲やポッドキャスト、オーディオブックといったあらゆるコンテンツを1対1のチャットで共有でき、テキストや絵文字で反応することも可能だ。これまで「聴く」という行為は個人的な体験にとどまることが多かったが、この機能が加わることで、同じ作品を聴いた仲間とアプリ内で気軽に会話が始まり、コミュニケーション手段になることもあるだろう。

この動きが興味深いのは、単なる利便性向上にとどまらない点だ。Spotifyはこの機能を通じて、ユーザー同士のインタラクションデータを自社内で収集できるようになる。誰が誰にどんな楽曲を共有したのか、どのコンテンツがどのようなリアクションを生んでいるのか。そのデータはレコメンドアルゴリズムのさらなる精度向上に活用され、ユーザーによりパーソナライズされた体験を精緻化するだろう。従来は外部プラットフォーム上で散逸していたデータを囲い込むことで、エンゲージメント強化と新たなバイラル拡散の仕組みを同時に手に入れるわけだ。

Spotifyはこれまでも「Discover Weekly」や「Blend」といったレコメンド機能でリスナー体験を豊かにしてきたが、Messagesの登場でさらにアプリ内で過ごす時間が伸びるだろう。特に、絵文字によるリアクションや短いメッセージを介したやり取りは、ストリーミング体験にソーシャル性を付加し、楽曲だけでなく、コミュニケーションの領域まで侵食するだろう。

マーケティングの視点で見ると、Messagesはアーティストやクリエイターにとっても新たな拡散チャネルとなる。リスナー同士が気軽に楽曲を共有し合うことで、ファンからファンへと自然に広がるバイラル効果が期待できる。従来型の広告やプレイリスト推薦とは異なり、信頼性の高い友人からの推薦という文脈でコンテンツが広がることは、プロモーション効果を飛躍的に高める。

この取り組みは、Spotifyが「単なる音楽ストリーミングサービス」から「ソーシャル・プラットフォーム」へと進化しようとする流れの一環とみることができる。競合するApple MusicやAmazon Music、YouTube Musicが類似機能を提供する中で、Spotifyは「聴く」「シェアする」「語り合う」を一体化させ、プラットフォーム内のエコシステムを強化する狙いを持つ。近い将来、グループチャットやコメント機能、アーティストとリスナーが直接つながる交流機能が追加されることも十分に予想される。

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