デジタルマーケティングでは「パーソナライゼーション」が重要なキーワードだ。コミュニケーションを、ターゲットに合わせてパーソナライズすることにより、大きな効果を得ることができる。それは、私たちは見たいものしか見ず、聞きたいものしか見ないからだ。
中でも、ウェブサイトの入り口である「ホームページ」をパーソナライズする動きが、消費者の心をつかむ新たな手法として注目を集めている。
高級百貨店Saks Fifth Avenueを傘下に持つSaks Globalは、このパーソナライズ化をさらに推し進め、成果を上げていいるという記事を読んだ。同社の新しい「ハイパー・パーソナライズド」なホームページは、機械学習アルゴリズムと顧客のリアルタイムの行動データを活用することで、訪問者ごとに異なる、完全に個別化された体験を生み出すパーソナライズ化されたホームページを生成するそうだ。
Saks Globalは、Saks Fifth Avenueだけでなく、昨年12月に高級なイメージのNeiman MarcusやBergdorf Goodmanも買収しており、その顧客リストはアメリカの富裕層を網羅しているだろう。
Saks Globalの事例から、パーソナライズされたホームページがもたらす具体的なメリットは、いくつかある。
まず、Saks Globalのデータではコンバージョン率が約10%向上した。これは、単に商品を羅列するのではなく、その顧客が本当に興味を持つであろうコンテンツや商品を厳選して表示することで、「欲しい」という気持ちを効果的に刺激できた結果だろう。
次に、訪問者あたりの収益が7%増加した。これは、顧客の好みに合わせた関連性の高い商品やおすすめ情報を提供することで、客単価の向上につながったことを示している。
これらの成果は、単に技術的な話に留まらない。Saks Globalは、実店舗で顧客とスタイリストが築く「一対一の関係」を、オンラインでも再現しようとしている。これは、顧客がまるで自分専属のスタイリストから提案を受けているかのような、特別な感覚をオンラインでも体験できることを意味する。
興味深いことに、Saks Globalは、今回のパーソナライゼーションの取り組みをホームページだけでなく、ショッピングジャーニーの他の接点にも拡大していく計画だそうだ。また、同社は複数の高級小売ブランドを統合することで、米国で最大かつ最も詳細な顧客データセットを構築している。このデータは、顧客のインサイトを深く理解し、革新的な機能やインターフェースを生み出すための「羅針盤」となるだろう。
さらに、PYMNTS IntelligenceとAWSの調査報告書によると、パーソナライズされたオファーに対する関心は、特に高所得者層で高いことがわかっている。年収10万ドル以上の消費者の89%がパーソナライズされたオファーに関心を示しており、これは平均的な消費者よりも顕著に高い割合だ。このことは、高級ブランドやサービスを提供する企業にとって、パーソナライゼーションがいかに重要な戦略であるかを明確に示している。
パーソナライズされたホームページは、単なるウェブサイトの機能追加ではない。それは、顧客一人ひとりに深く寄り添い、真に価値ある体験を提供するための、顧客中心の戦略の核となるものだ。今後、この流れはますます加速し、私たちのオンライン体験は、より豊かで個人的なものへと進化していくだろう。