Facebookのカメラロール提案

by Shogo

Facebookが、AIを使った写真の機能を導入した。この新AI「カメラロール提案」は、未投稿の写真まで、スマホから発掘し、コラージュやリスタイリングを自動提案してシェアを促す機能だ。 現在は米国とカナダでオプトイン提供されている。スマホの写真を継続的にクラウド処理して編集案をユーザーに提示する。当然、投稿前はユーザーのみが閲覧できる。​

一般の利用者にとって最大のポイント(あるいは問題)は、「未投稿の写真がクラウドに継続アップロードされ、AIが内容(人物、物体、日時など)を解析して編集案写真を作るという設計が、写真そのものだけでなく文脈情報まで可視化することにあることだ。 Metaによれば、この提案は最初は自分にしか見えず、広告ターゲティングにも使わないとされる一方、AI編集を実際に使ったり、提案を公開した場合には学習に用いられる条件が付くため、AI学習のトリガーになることを理解して同意することが重要になる。​

同意の仕組み自体は、設定でオプトイン/オプトアウトでき、クラウド処理のスイッチも明示されているが、利用規約上は画像の要約や変形など広範な処理が可能で、AIが見たことからプラットフォームは写真の内容の関係性や生活パターンを推測し得る点が本質的なプライバシー論点となる。 

また、Metaが、公開済みの投稿やコメントなどの公開データを幅広くAI訓練に利用してきた流れがある。地域によってはオプトアウトの期限や運用が設けられているため、未投稿データの扱いと合わせて、地域ルールとプラットフォームの通知内容を定期的に確認するのが安全策になる。​日本においては、これについて規制があるようには思えない。それ自体が問題だ。つまり野放しになっている。

今回のカメラロール提案の仕組みは、スマホ内の眠っている写真をAIの提案で呼び起こし、投稿までの手間を減らすことで、創作と共有の摩擦を下げてくれる利点がある。 しかし、継続アップロードに伴う保管期間、削除や除外の粒度、人物を含む写真の扱い、生成・編集のラベリングといった要素が、重要なプライバシーに関係するため、設定画面でクラウド処理のオン/オフ、機能自体の有効化/無効化、アクセス権限の範囲を見直しておく必要があるだろう。​自分の行動や友人や家族の写真が学習データになってしまう可能性が高いということを理解すべきだ。

この機能は、ユーザーの写真投稿を促して広告チャンスを増やすというFacebook側のメリットのほうが大きいように思える。

このようなプライバシー論点として、Metaは過去にFacebookやInstagram上の公開範囲の投稿をAI訓練に使う方針を明示しており、欧州では所定期日までのオプトアウト手続きを伴うという運用が問題になったこともある。 これも、オプトアウトという明示的な手続きがユーザー側に追わせられていることが問題で、先日のSoraの著作権手続きの問題と同じ種類の問題だ。

こうした既存の方針に今回の未投稿データのクラウド解析(学習条件付き)が重なると、生活の断片や交友関係までAIの推測対象が拡張される可能性があるため、公開・非公開の線引きと、編集や共有の行為が持つ学習データになることを理解して使う必要があるだろう。​

総じて、利便性とプライバシーはトレードオフであり、未投稿写真を素材にした自動編集の恩恵を受けるなら、いつ・どの写真がアップロードされ、どの操作で学習対象化され、どれくらい保管されるかという3点を自分で理解してコントロールする姿勢が不可欠だ。 迷う場合は、機能をオフにしたまま通常の手動投稿に限定する、あるいはクラウド処理だけを無効化して提案の露出を最小限にする、といった段階的な利用から始めるのが現実的な落としどころになるだろう。​

いずれにせよ、多くのアプリは他人のスマホの中身に手を突っ込もうとしているので、何をするにも許可の範囲をどうするかということに常に確認して、その後で時々確認する必要があるだろう。

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