Windows 10のサポート終了

by Shogo

MicrosoftがWindows 10のサポートを10月14日に終了した。長年使い慣れた環境からの移行を促すこの決定に、多くのユーザーが戸惑っている。SNSなどでは、この話題が多いと報道されている。

読んだ記事によると、世界のWindows利用者の過半数はいまだにWindows 10を使い続けており、新しいWindows 11に踏み切れない理由を語る声は多いそうだ。私自身もその意見に賛成だ。数か月前から使い始めている。見た目は多少は洗練されたが、電源を切るだけでも操作が一段階増え、シャットダウンまでの流れが微妙に変わる。その小さな違和感が、毎日の使用では意外と大きい。

長年使い続けられたものには、積み重ねによって形成された「安心感」がある。学校や職場で誰もが同じ操作を共有し、エラーも予測でき、トラブル対応のノウハウも蓄積されている。いわば、Windows 10は社会的インフラに近い存在だ。それに対してWindows 11は、見た目も構造も刷新された「別の世界」のように感じられる。タスクバーが中央寄せになり、メニュー構成が変わり、デザインはモダンになったが、使い慣れた流れを微妙に乱す。そのため多くの人が今のままで十分と感じてしまうのも個人的も良く理解できる。

一方で、AppleのmacOSを見れば、バージョンが変わっても基本操作やレイアウトはほとんど変わらない。新機能が加わっても、ユーザーが学び直しを強いられることはない。Appleは「変えないことによる進化」を美学として保っており、ユーザーの安心感を壊さない。その点で、Microsoftとの対照は非常に興味深い。Appleは変化を感じさせない形で届け、Microsoftは変化を見せることで新しさを強調する。どちらも哲学の表れなのだろう。

では、なぜMicrosoftは、ユーザーの抵抗を知りながらも移行を強く進めるのか。その背景には、単なるOS更新ではなく、ビジネスモデルの転換という狙いがあるそうだ。Windows 11は、生成AI、Copilotを中心に、クラウドとAIを深く統合した構造になっているのだそうだ。

研究室でしかWindowsを使わないし、Copilotも使っていないから良く分からないが、もはやWindowsは、単独のパソコン用ソフトではなく、クラウドを介してOffice、Edge、TeamsなどをつなぐAIプラットフォームの中核に位置づけられているのだそうだ。古いWindows 10のままでは、この新しい世界にアクセスできないらしい。言い換えれば、MicrosoftはOSをAIサービスの玄関口に変えようとしているのだという。

さらに、Windows 11はセキュリティ面でもTPM 2.0といった新しいチップの搭載を義務づけ、旧型PCを事実上切り捨てているそうだ。これは安全性の向上を目的とする一方で、ハードウェアの更新を促す仕掛けでもある。結果として、パソコンメーカー各社に新たな販売需要が生まれ、Microsoftのエコシステム全体が動く。ここに、ソフトとハードを巻き込む経済設計の巧妙さがある。巧妙と言えば、聞こえは良いが仲間で金儲けをしようということだ。

しかしその戦略では、起業の進化が、ユーザーの日常の中では不便の理由に変わってしまう。ユーザーにとっての価値は、機能が増えることではなく、使い慣れたものが壊れないことにある。Microsoftはその心理を十分に読み切れていないようにも見える。結果として、Windows 11の革新性は理解されても、使いやすいという評価軸では依然としてWindows 10に軍配が上がるだろう。

興味深いのは、こうした操作感の差がブランドイメージにも影響していることだ。MicrosoftはAIやクラウドの分野で最先端を走るが、ユーザーの印象は変わりすぎるといった不安を伴う。一方のAppleは、常に新しいのに変わらないという逆説的な安心感を提供している。ここに、テクノロジー企業のブランド戦略の成熟度の違いが見て取れる。

だが、別の面からみると、今のところAppleは、AIで大きく出遅れているので、OSの大手術が必要ないから、変わっていないと言えるのかもしれない。

AIなどの技術の進化を考えれば、長期的には、Microsoftの方向性は正しいのかもしれない。AIネイティブなOSというビジョンは、確実に次の10年を支える基盤になるだろう。ただし、その未来へとユーザーを導くには、変化の痛みをやわらげるマーケティングが必要だった。人は、慣れを失うことを恐れる。学習コストは、限りなく高い。変化を技術ではなく、使い勝手としてデザインできるか。そこに、今後のMicrosoftの将来がかかっている。

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