Googleが2022年1月に予定していたクッキーの廃止を延期することを発表した。新しい計画は、2023年の半ばからクッキーを徐々に廃止して、2023年の終わりまでに完了するとした。
Googleのこのクッキーの廃止を遅らせる決定は少し驚きだ。すでにAppleはSafariやiPhoneで、クッキー廃止はもちろん、プライバシー保護を強く打ち出して、他の方法でも、行動履歴などを共有するかどうかを、ユーザーが選択する仕組みを導入しているからだ。またブラウザの競合でもあるFirefoxは、AppleのSafariと同じようにクッキーを無効または制限できる仕様になっている
このGoogleの突然の計画変更は、EUによるGoogleの独占禁止法違反の調査に関係しているのかもしれない。クッキーの排除もその調査の一部となっていると言う事らしい。またイギリスの公正取引委員会もChromeの仕様のいかなる変更についても調査することをGoogleと合意している。
このような調査の対象になっていることが、理由と思われるが、もう一つの理由は、Googleがクッキーに代わるものとして広告配信の新しい技術として導入予定しているFLoCが多くの企業やメディアから拒否されていることも理由かもしれない。FLoCは、Federated Learning of Cohortsの略で、個人を特定せずグループとして把握して、広告を配信する新しい仕組みだ。個人は特定されないので、個人のプライバシーは守られるということが売りだ。
しかし、フィンガープリンティングのような他の手法を組み合わせることにより、ある程度の特定は可能になる。そもそも、検索の90%を握っているGoogleは個人の情報の全ての情報を握っている。FLoC導入により、グループの情報しか外部に渡さないので、全ての情報を持つGoogleの立場はますます強固なものになり、独占がさらに進むという結果が見えている。
このGoogleに対して、Amazonは、すでにFLoCを無効にする対応を行なっている。Amazon傘下のほとんどのサイトはFLoCの無効化が完了していると聞く。オンライン販売を行うAmazonではあるが、広告の販売でも急速な成長を遂げている。そのために、広告の分野においてGoogleに対抗するために、ユーザーの行動履歴のデータをGoogleに渡すつもりはないと言うことなのだろう。
広告で成り立っているGoogleにとって、広告を配信するためのテクノロジーは必要不可欠である。そのためにクッキーに代わるものとしてFLoCの導入を開始しているが、これが使えないとなると広告の販売に大きな打撃を受ける。このために、クッキーの廃止を遅らせて対応を検討するのではないだろうか。