ノスタルジー・マーケティングが注目されていると言う。1990年代、1980年代、1970年代などがマーケティングのテーマとして取り上げられる。古いブランドは、顧客とのつながりを強調するために古い時代の音楽、デザインやファッションを利用しているということのようだ。パンデミックによる不確実性が、ノスタルジーに向かせる分析もある。
考えてみれば、TVコマーシャルには、古い音楽が使われることがよくあるし、映画は過去のコンテンツを繰り返しリメイクしたり、過去のスーパーヒーローを登場させる映画を繰り返し作っている。大学時代の先生がよく言っていたように、「日の下に、新しきものなし」だ。
アメリカに留学したときに、好きだったテレビ番組にThe Wonder Yearという番組があった。日本でもNHKが時々放送していた。この番組が好きで毎週見ていたし、その後DVDも買った。しかし、DVD化されていたのは番組の一部の放送回だけで全体はなかった。作品中に使われているヒット曲の著作権の関係でDVD化できなかったそうだ。
The Wonder Yearは1969年に設定された、白人の家族のドラマだった。たしか、シカゴのお話だった気がする。放送されていた1988年から1990年代の初めでも、すでに20年前以上のノスタルジーで作られた番組だ。
今年、ABCとHuluはThe Wonder Yearをリメイクする。タイトルは同じだが、全く違う番組だ。1960年代のアラバマの黒人家族のお話のようだ。まず、ABCが放送して、翌日からHuluがスリリーミングで配信する。これは、これからの放送のパターンだろう。
この番組のプロモーションのために1960年代のガソリンスタンドを実際にハリウッドに仮設して、当時の価格でガソリンを入れたりアイスクリームを買ったりできるイベントを行う計画だと言う。パンデミックのために対面式のイベントは多くが中止になっているが、このイベントについては対面式で行うと言う。ABCとHuluにとってはどれだけ力を入れた新番組と言うことなのだろう。これこそ、ノスタルジー・マーケティングだ。
この1980年代のテレビ番組のリメイクと同じタイミングで発表されたのは、ABBAの40年ぶりのコンサートとアルバムだ。ABBA VOYAGEと言う画像が既に出回っている。こちらのコンサートはオンラインでチケットは9月7日から発売。アルバムの販売開始は11月5日と言うことだ。最後のアルバム発売が1981年と言うことなので40年ぶりの新作だ。ただABBAの場合には、ミュージカルの「マンマ・ミーヤ」のヒットやその後の映画化で、音楽自体は聞かれ続けていたと思うので、40年ぶりと言う感じはしない。
それでもやはり、ノスタルジーを感じる。パンデミックによる不安感がノスタルジーに向かわせるのかどうかよくわからないが、多くの分野で古いものが復活している。