交差点のラウンドアバウトについての記事を読んだ。ラウンドアバウトは環状交差点と訳すようだ。ロータリー交差点と言うのかと思っていたら、ロータリー交差点では、進入の際に一時停止位置や信号器があるものだけを言うらしい。だからラウンドアバウトは、全く停止位置も信号機もない。
アメリカに住んでいた頃は、所々にラウンドアバウトがあり、なかなか運転するのに慣れなかった。進入してレーンを移って、回って、出るときにレーンを移って外に出る。この動きが、日本では経験したことのないことなので通過するたびにヒヤヒヤしたのを思い出す。
このラウンドアバウトがアメリカで増えていると言う。インディアナポリスの北にあるキャメル市(人口10万人)には、ラウンドアバウトが140もあると言う。この街の交差点はほとんどがラウンドアバウトになっていると言っても良いのかもしれない。
ラウンドアバウトのメリットはたくさんある。1つは普通の交差点に比べて、死傷事故を減らす効果があると言うことだ。アメリカ運輸省の資料によれば、死亡事故については90%減少、傷害事故も76%減、すべての衝突も35%減と言う驚くような数字が紹介されている。
さらに、自動車が交差点でスピードを落とすことで、歩行者にも安全性が増すと言う。そもそも、重大な衝突事故は、半数が交差点で起こるらしい。ラウンドアバウトになると、スピードが出ている車が正面や側面に衝突することがなくなるので、安全性が増す事は理解できる。多分ラウンドアバウトで起こる事故は軽い接触事故で、死傷者が出るようなことにはならないだろう
さらに、もう一つの利点は環境に良いと言うことだ。ラウンドアバウトには赤信号がないので、車が止まって、アイドリングをして、また発車することがないのでガソリンの消費量が減る。このガソリンの消費量は全体から見れば非常に大きいと思われる
ガソリンだけではなく、信号機もないので電気の消費量も減る。この信号機がないことにより、電気を消費しないだけではなく、災害時に送電が止まった時にも、道路の安全な通行が可能になると言う副次的な効果もあると思われる
140のラウンダバウトがあるキャメル市は、そこの市長がラウンドアバウトを推進していると言うことだ。この市長は、イギリスに留学をして、その際にラウンドアバウトに出会っている。市長に選ばれてからラウンドアバウトを取り入れるために、コンサルタントを雇ったら、そのコンサルタントは、ラウンダバウトは危険なものであり、マサチューセッツ州ではラウンドアバウトを撤去していると反対理由を述べた。
市長はこのコンサルタント話をして、コンサルタントが巨大なラウンドアバウトを念頭に置いていることを発見した。巨大なラウンドアバウトは、例えばパリの凱旋門のラウンドアバウトのようなものである。
たくさんのレーンがある巨大なものではなく、市長が考えていたのはもっとコンパクトなものだ。車が90度の角度ですれ違うのではなく、ラウンドアバウトを回ることにより事故を減らせると考えたのだ。そして、市の中心から離れた場所にいくつかラウンドアバウトを設置してみると、ラッシュアワーの渋滞を軽減することがわかった。このため徐々にラウンドアバウトを増やしていったと言うことだ
他の都市でも、ラウンドアバウトが徐々に増え始めている。理由は、環境対策だ。ミシシッピーで行われた2つのラウンドアバウトの研究では、二酸化炭素排出量が56%も減少したと言う結果が出ている。また別の調査でも、6つのラウンドアバウトの累積の二酸化炭素の量は16%から59%減少したと言う。車社会のアメリカでは、ラウンドアバウトを設置する効果は大きいだろう。
日本のラウンドアバウトを調べた。Wikipediaによると、2021年3月末現在で126カ所にあると言う。人口10万人のキャメル市にある140より少ない。少しずつ増えているようだが、国交省の整備条件では1日の交通量が1万台未満と言うことで、比較的交通量の少ない場所に設置されるようだ。そういうことも関係するのか、東京には1カ所だけで多摩市にあるようだ。
進入口に一時停止や信号機が設置されているロータリー交差点は、明治から大正時代には都市の交差点にたくさん設置されていたらしい。その後交通量の増加に伴い急速に設置撤去されたようだ。
このラウンドアバウトについて、記事から感じた事は、アメリカではキャメル市のように市長が推進してラウンドアバウトを設置することが可能な一方、日本では国交省の規定があって簡単に設置ができないようになっている。この辺にアメリカと日本の国と自治体の関係の違いが出ていることが分かって感覚的に納得できる。もちろん悪い意味だ。ここにも日本の硬直の理由がわかる。