アメリカの寒波でEVに問題

by Shogo

アメリカでは北部を中心に広い範囲で寒波に襲われて、数十人の死者も出ている。飛行機の欠航も相次ぎ、インフラにも大きな影響が出ている。

一番問題になっているのは電気自動車のようだ。電気自動車が動かなくなって置き去りにされている映像を何度も見た。寒さのためにEVのバッテリーが消耗して動かなくなってしまったようだ。充電ステーションも長い列になり、待っている間にバッテリーが死んでレッカー移動されたりしている。

マイナスの気温はEVバッテリーの効率を著しく押し下げる。これは昔スキー場でビデオのバッテリーがあっという間になくなってしまったことからも、一般的に知られている現象だ。以前よりEVの問題として走行距離とこの寒さが挙げられてきた。

しかも充電されたバッテリーが急速に消耗されるだけではなく、通常なら1時間で充電できる充電もスピードが著しく落ち、5時間もかかるようだ。

この現象は低温がEVバッテリーの中で行われる反応を極端に抑制することで起こる。リチウムイオンバッテリーの中では、リチウムイオンが液体電解質の中を伝わって電気を生成する。しかし寒さのためにこのスピードが極端に遅くなり、多くのエネルギーを放出することができなくなる。このためにバッテリーは効率が悪化して急速に消耗してしまう。同じ現象は逆方向にも起こる。充電する際にも電子はゆっくり動き、バッテリーの充電スピードは極端に遅くなる。

化学物質はすべて低温になると遅くなることが知られており、この自然現象はEVのバッテリーにも働いていると言うことだ。

このようなことが世界中でニュースになると、今起こっているEVに対する反動がますます進むかもしれない。多くの国で2030年から2040年のレンジでガソリン車の新車販売が禁止になる政策が発表されていた。しかし、最近になって、これが見直されEVへの転換が部分的に延期されたり政策が変更になっている

ドイツ

2025年までに新車販売の50%を電気自動車とすることを目指していた。しかし、2023年7月に、この目標を2030年に延期することを発表した。その理由として、充電インフラの整備が進んでおらず、電気自動車の価格が高いことなどを挙げている。

フランス

2030年までに新車販売の100%を電気自動車とすることを目指していたが、やはり2023年7月に、この目標を2040年に延期することを発表した。その理由として、電気自動車の製造に必要なレアメタルの調達が困難になることなどを挙げている。

イタリア

2030年までに新車販売の60%を電気自動車とすることを目指していたが、2023年10月に、この目標を50%に引き下げることを発表した。他の国と同様に、その理由として、充電インフラの整備が進んでおらず、電気自動車の価格が高いことなどを挙げている。

イギリス

2030年までに新車販売の100%を電気自動車とすることを目指していた。しかし、2023年10月に、この目標を2035年に延期することを発表した。その理由は、電気自動車の製造に必要なレアメタルの調達が困難としている。

このEVシフトの見直しは様々な形で現れてきている。レンタカーのHearzは2万台のTeslaを売却してガソリン車に買い換えることを発表した。GMは、最新モデルであるChevy Blazer EVの販売を停止した。また、フォードもEV用のバッテリーの製造数を削減すると発表している

このような状況で、一時は死んだ技術とみなされていたハイブリッド車が復活してきているようだ。その理由はEVの価格があまりにも高いために、コストパフォーマンスの良いハイブリッド車が選択肢になることや、まだまだ、多くの国や地域ではEVの充電インフラが普及していないことなどが理由になっている。

さらに言うと、EVは完全に環境に負荷をかけないわけではなく、発電段階での環境負荷が高く、その電気を消費しているのでガソリン車に比べて圧倒的な環境的な優位性があるわけではないと言うことだ。もちろん長期的には、ガソリン車は製造されなくなることは確実だ。それは環境負荷のために白熱電球が全てLEDに置き換わったのと同じことだ。だが、EVもまだ過渡期の技術であり、最終的には燃料電池のような環境負荷がさらに少ない技術にとって変わられる可能性が高い。求められるべきは、単純にEVに転換することではなく、長期的かつ総合的に環境負荷の低い技術の開発・転換を進めると言うことだろう。

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