World Happiness Report（世界幸福度報告書）」の2024年版が発表された。国別の幸福度ランキングで日本の順位は143カ国中51位となり、前年の47位より順位が落ちた。
ランキングで、フィンランドが7年連続で1位を獲得している。上位5カ国はフィンランド、デンマーク、アイスランド、スウェーデン、イスラエルと、いずれも小規模な国々だ。一見すると、小さな国の方が幸せになりやすいという印象だが、上位10カ国には、6位のオランダ（1770万人）や10位のオーストラリア（2600万人）といった大国も含まれている。
World Happiness Report（世界幸福度レポート）は、国別の幸福度を評価するために、複数の指標を基にランキングを作成している。このレポートは、国連の持続可能な開発ソリューションネットワークが関与しており、データはギャロップの世界調査に基づいている。具体的な調査方法としては以下のようになっている。
1. 使用される指標
幸福度のランキングは、六つの指標を基に評価される。
- 国内総生産（GDP）あたりの購買力平価（PPP）：経済的豊かさの指標。
- 社会的支援：誰かが困った時に頼れる人がいるかどうかの指標。
- 健康寿命：健康的な生活を送れる期間の指標。
- 個人の自由度：人生の選択における自由の度合い。
- 寛容性（Generosity）：寛大さの指標、他人への寄付の頻度など。
- 腐敗認識：政府やビジネスの腐敗がどれだけ少ないか。
2. 調査方法
ギャロップが実施する年間の調査で、各国1000人以上の成人を対象に面接を行う。この調査では、被調査者に「0から10のスケールで、自分の現在の生活を評価してください」と質問する。ここで0は最悪の可能な生活、10は最良の可能な生活を表す。
3. 年次比較
ランキングは、調査年を含む過去3年間のデータの平均を基にしているようだ。これにより、一時的な出来事や変動がランキングに与える影響を平滑化する意図がある。
日本は51位という結果で、過去4年間で初めてトップ50圏外に落ちた。レポートでは、日本の幸福度が低下の理由として、以下の3点が挙げられていた。
1. 長時間労働
日本は、世界でも有数の長時間労働大国である。OECD諸国における平均年間労働時間は1760時間なのに対し、日本は1919時間と、約160時間も長いのが現状だ。経済停滞にも関わらず、無駄に長く働いているということか。
長時間労働は、睡眠不足やストレス、心身の疲労などの問題を引き起こし、幸福度を低下させる要因となる。また、育児や介護との両立が難しく、ワークライフバランスの悪化にも繋がっている。そもそも、ワークライフバランスという言葉はあっても、一部の人以外は真剣に考えていない印象だ。
2. 社会的な孤立
近年、日本社会では孤独死や社会的な孤立が問題視されている。核家族化や地域社会の希薄化などが原因で、人と人との繋がりが希薄になり、孤独感を抱える人が増えている。先日読んだ自殺数の多さもその結果だ。
孤独感は、うつ病や不安障害などの精神疾患のリスクを高め、幸福度を低下させる要因となる。また、社会的な孤立は、生活意欲の低下や社会参加の減少にも繋がってしまう。
3. ジェンダー格差
日本は、ジェンダー格差が依然として大きい国だ。世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数において、日本は121位と、先進国の中では下位に位置している。
ジェンダー格差は、女性の経済的な自立や社会的な活躍を阻害し、幸福度を低下させる要因となっている。また、男女間の賃金格差や、育児・介護における男女役割分担の固定観念なども、ジェンダー格差の解消を妨げている。こｋれも、女性の自殺率世界第２位という不名誉な結果につながっている。
これを読む限り、レポートの指摘はすべて事実であり、国民の幸福感を感じさせない制度や文化が根強くあることが分かる。それに、経済の停滞で経済的な不安があらゆる年齢において感じられているだろう。
だからといって、フィンランドに移住すればよいわけではなく自分で始められるところから始めるしかない。まず、ワークライフバランスを考えて、長時間労働から逃れることと、できるだけ友人・知人との関係を作ることに努力することが重要だろう。
ジェンダー格差の問題は、社会制度だから簡単には解決できそうもない。これについては、声を上げて政府や社会を動かしてゆくしかないのかもしれない。といっても時間もかかるし、どのように実現できるのかも正直わからない。
