Google、検索広告から多角化企業へ

by Shogo

AIチャットボットの普及により私たちの検索行動は大きく変わろうとしている。そのような状況で、検索連動型広告(リスティング広告)で成長してきたGoogleが、どのような経営判断をして、このAI時代に生き残っていくのか興味深い。そこでGoogleの親会社であるAlphabetの収益構造を調べてみた。2025年第2四半期の決算データを見ると、すでに単なる「検索エンジンの会社」を超えた多角的な収益モデルを構築している企業であることが明らかだ。

Alphabetの収益構造において最も注目すべきは、広告事業が依然として全体の約75%を占める主力セグメントである点だ。2025年第2四半期において、Google検索広告とYouTube広告を合わせた広告収入は713億4000万ドルに達し、前年同期比10%の成長を記録した。この時代に2桁成長だ。

なかでも注目は、YouTube広告の急成長だ。同期間でYouTube広告売上高は98億ドルとなり、前年同期比13%増という力強い伸びを示している。これは四半期ベースでは100億ドルに迫る水準であり、YouTube単体でも巨大な事業規模を持つことを証明している。25年前に、意味の分からない買収と思ったが、大きな成果が出ている。これも、余裕のある会社だからできたことなのかもしれない。

そして、YouTubeと並んで注目されるのがGoogle Cloudの躍進だ。2025年第2四半期において、Google Cloudの売上高は136億2000万ドルに達し、前年同期比32%という驚異的な成長率を記録した。これは全社売上高の14%に相当し、5年前の30億ドル(全体の8%未満)から300%以上の成長を遂げている。

特に収益性の改善が顕著で、営業利益は前年同期の11億7000万ドルから28億3000万ドルへと倍増し、営業利益率は11.3%から20.7%へと大幅に向上した。この収益性改善は、規模の経済効果とAIソリューションへの需要拡大によるものと分析されているようだ。

市場シェアでは依然としてAWS(32%)、Microsoft(23%)に次ぐ第3位(約12%)の位置にあるが、成長率では他の2社を上回るペースを維持しており、AI時代における競争力強化が期待されている。

そして、Alphabetの収益構造で興味深いのが、ハードウェアやサブスクリプションサービスを含む「その他事業」だ。Pixelデバイス、Nestハードウェア、YouTube TV、YouTube Musicなどを含むこのセグメントは、全体の12%を占めている。だが、過去5年間で売上高は倍増しているものの、Google Cloudほどの急成長や高収益性は実現していない。Google Oneを個人的には契約しているが、Geminiの需要が本格化すれば、このセグメントも伸びるのではないだろうか。

一方、「Other Bets」セグメントは依然として実験段階にある。Waymo、Verily、Wing、Calicoなど未来技術への投資を行うこの部門は、2025年第2四半期で売上高3億7300万ドル(全体の0.3%)にとどまっている。このセグメントは「未来への賭け」として位置づけられており、短期的な収益貢献よりも長期的な技術革新を目指しているのだろうから、現時点の収益は考えなくて良いだろう。ここは、YouTubeのように25年後に収益を産めば良い。

Alphabetの財務健全性は極めて高く、2025年第2四半期において売上総利益率60%、営業利益率32%、純利益率29%を達成している。これらの数値は業界平均を大きく上回り、同業のMicrosoft(36%)やMeta(39%)に匹敵する高水準を維持している。

特に注目すべきは、営業利益率が30%を超える安定的な推移を続けている点だろう。これは広告事業という高収益性ビジネスモデルの強固さを示すとともに、Google Cloudのような成長投資を行いながらも高い収益性を維持する経営力の証といえる。

Alphabetは2025年に設備投資額を当初計画の750億ドルから850億ドルに上方修正し、AI開発競争への本格参入を表明した。Gemini AIの月間アクティブユーザーが4億5000万人を超え、企業向けAIソリューションの需要も急拡大している状況を受けての投資拡大だ。

この大規模投資は短期的には利益を圧迫する要因となるが、長期的には検索、YouTube、Cloudすべての事業でAI活用による競争優位性確立を目指す戦略的な判断と言えるだろう。今後のネット事業の中心は、やはりAIの競争力だ。

Alphabetの収益構造は、依然として広告事業が中核を担いながらも、Google Cloudの急成長により事業ポートフォリオの多様化が進んでいる。検索広告という安定した収益基盤を持ちながら、クラウド、AI、未来技術への投資を継続する同社の戦略は、AI時代の変化に対応した成長モデルの構築を目指していると分析できる。

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