Googleの解体問題は、まだ続いている。米司法省とGoogleによる広告技術事業をめぐる独占禁止法裁判の救済措置審理がバージニア州東部地区連邦地方裁判所で開始された。Googleと司法省の裁判の序盤では、判事は4月に、Googleが「メディア向け広告サーバー市場」と「広告取引所市場」において違法な独占状態にあると認定する判決を下した。
Googleの「三重独占」とその経済規模
司法省の主張によると、Googleは米国の広告ツール市場で87%のシェアを占めており、デジタル広告を三重に独占していると指摘されている。この三重独占とは、以下の市場における支配的地位を指す。
- メディア向け広告サーバー市場 ウェブサイト運営者が広告枠を管理するためのシステム
- 広告エクスチェンジ市場 広告主とパブリッシャーを結ぶ取引プラットフォーム
- 広告主向けツール市場 広告主が広告出稿に使用するシステム(この分野では独占認定されず)
Googleの広告技術事業は2024年に303億6000万ドルの収益を上げており、これは親会社Alphabetの総収益の約9%に相当する。この数字は10年前の2倍に達している。Googleはオンライン広告で支出される1ドルあたり少なくとも30セントを徴収しており、これにより広告主のコストが上昇し、メディアの収益が減少していると指摘されている。
特に深刻な影響を受けているのがニュース媒体業界だ。米国のニュースメディア市場では、印刷広告収入が2017年の120億ドルから2024年には50億ドルへと縮小し、デジタル広告収入も50億ドルで横ばいとなっている。この状況は、Googleの広告収益が同期間に5倍に成長したことと対照的だ。
司法省が求める「構造的分離」の詳細
司法省は、Googleの独占解消のために、分離以外に意味のある変化をもたらす手段はないと主張し、以下の措置を求めている。
必須売却対象
- AdX(広告エクスチェンジ)の分離売却
- パブリッシャー向け広告サーバーの独立化
- Google Ad Managerスイートの解体
技術的透明性の強化
- 広告オークションシステムのソースコード公開
- 競合他社との相互運用性確保
- 広告取引における透明性向上
これに対してGoogleは、無謀な提案であり、現在のシステムは既に競合他社と互換性があると反論している。同社は代替案として、広告エクスチェンジの競合システムとの互換性向上や、オークションルールの調整などを提案している。
この裁判の外側でも、Googleのアドテク独占という批判は、多くの波紋を起こしている。欧州では32のメディア企業がGoogleを相手取り、約3400億円の損害賠償を求める集団訴訟を起こしている。
日本でも公正取引委員会の発表によると、デジタル・プラットフォーム事業者との契約に問題があると回答した企業が、広告主・広告代理店で35~50%、広告仲介事業者で40~75%、媒体社で25~65%に上る。
先日の裁判所の判断でChrome の売却は避けられたが、まだまだGoogle とGoogleの広告事業の分割を求める司法省の法廷闘争は続きそうだ。これは、これえGoogleの大成功の代償ということなのだろう。