ChatGPTに広告

by Shogo

OpenAIのサム・アルトマンCEOは、かつて広告を「不気味だ」と呼び、「最後の手段」と語っていた。だが、その意見は変わっているようだ。報道によると、ChatGPTのAndroidアプリに広告表示のコードが発見されたということだ 。これは、週間8億人という巨大なユーザーベースを抱えながら、95%が無料ユーザーという現実と巨額の赤字の解決のために、サブスクから広告へとユーザベースのマネタイズの準備を進めているようだ。

記事によると、ChatGPT Androidアプリのベータ版(v1.2025.329)に埋め込まれた 「ads feature」、「search ad」、「search ads carousel」、「bazaar content”」といった文字列発見されたそうだ 。これは、単なる広告ビジネスの検討段階を超え、広告配信の技術基盤が実装フェーズに移行したことを意味する。さらに興味深いのは、あるユーザーがすでに広告らしきものを目撃していること。PelotonのフィットネスクラスをPRする画像が、チャットの返答の下に表示されたという。

2024年、ハーバード・ビジネス・スクールでの講演でアルトマンはこう語った。「AIと広告の組み合わせは、私にとって独特に不穏なものだ」と 。企業トップとしては珍しく率直な発言だった。この段階では広告を完全に否定していた。

ところが2025年に入ると君子豹変だ。OpenAIポッドキャストの初回エピソードで「全面的に反対ではない」と発言し、Instagramの広告モデルを「クールだ」と評価していた 。​このことから、ChatGPTに近い将来には広告が導入されると見られていた。

この豹変には理由がある。2025年上半期、OpenAIは43億ドルの売上を計上しながら、135億ドルもの純損失を出した 。サブスクリプション収入だけでは、膨らみ続けるAIインフラのコストを賄いきれない。​これは、AIはメディアではないが、メディアビジネスが辿ってきた道だ。

8億人ものユーザーを持つChatGPTへの広告導入が実現すると、デジタル広告の地図を塗り替える可能性を秘めている。

まず、検索広告が再定義される。Googleが築いてきた「キーワード→広告」というモデルとは異なり、ChatGPTでは会話の文脈に溶け込む形で広告が表示されるだろう 。2026年には、ChatGPT無料ユーザー収益化で10億ドル、2029年には250億ドルという内部予測がリークされている 。この規模は、Googleの検索広告に対する本格的な挑戦を意味する。​

しかし、AIの信頼性に疑問が生じる可能性がある。検索エンジンなら、ユーザーは広告枠と自然検索結果を視覚的に区別できる。だがAIチャットボットの回答に広告が混入した場合、その境界線は曖昧になる。この回答は本当に最適解なのか、それとも誰かがお金を払ったのかと、ユーザーがそう疑い始めた瞬間、ChatGPTの最大の武器である信頼性が揺らぐ 。このジレンマをどう解決するかが課題だ。​

PerplexityはすでにAI検索に「スポンサード・フォローアップ質問」という広告フォーマットを導入し、Googleも「AI Overviews」への広告表示を拡大している 。AIチャットボット市場は2025年時点で100〜150億ドル規模に達し、2029年には470億ドルへの成長が見込まれる 。ChatGPTはそのトラフィックの48%を握る圧倒的な存在だ 。​

このAIの巨人が広告市場に参入すれば、広告主にとっては新たな顧客接点が生まれる。同時に、従来のSEOやリスティング広告の前提が根本から覆される可能性もある。

You may also like

Leave a Comment

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

error: Content is protected !!