Gemini 3.0 の登場で、GeminiがChatGPTを能力的に追い越したと話題になっている。だが、それ以前からChatGPTの王座に影が刺し始めていたようだ。
Sensor Towerの最新データによれば、ChatGPTのグローバル月間アクティブユーザー数は2025年8月から11月の3カ月間で約6%の成長に留まり、それまでの爆発的な拡大ペースは明らかに鈍化している。一方、GoogleのGeminiは同期間に約30%のユーザー増加を記録し、前のバージョンの「Nano Banana」画像生成モデルのバイラルヒットが追い風となったと分析されている。ChatGPTが、AIの象徴として君臨してきた時代が変わろうとしているのかもしれない。
Gemini 3.0は、ともかくすごい。日本語の能力は進んだとは思えないが、マルチモーダルでスライドやインフォグラフィックを作る能力には驚かされる。これまでAIが不得意だった文字画像の生成が、ほぼ完璧だ。これには、驚かされる。
最近のChatGPTが直面している成長鈍化は、一過性の停滞なのだろうか。年間成長率で見れば、ChatGPTのアクティブユーザーは前年比180%増と依然として高い数字を維持しているものの、最新のデータでは月次ベースでは伸びが止まり始めている。これは市場飽和の兆しと捉えることもできるし、Geminiとの競争やPerplexityやClaudeといった新興プレイヤーの台頭による競争激化の結果とも読める。実際、Perplexityは2025年に前年比370%、Claudeは190%という驚異的な成長を遂げており、AI市場は、ChatGPT一極集中から多様化へとシフトしている。
この変化やGemini 3.0の脅威的な能力向上を受けて、OpenAIのCEOサム・アルトマンは社内に「コードレッド」を宣言した。彼が従業員に送った内部メモには、ChatGPTのパーソナライゼーション機能、信頼性、画像生成能力、応答速度の改善を最優先事項とし、他のプロジェクトを遅らせてでもチャットボットの品質向上に集中せよという緊急指示が記されていたようだ。
Gemini 3.0の圧倒的な技術優位性
Googleが投入したGemini 3.0は、技術的に新たな次元へ到達したと評価されている。前世代のGemini 2.5 Proと比較して、処理速度が2倍に向上しながらも、主要ベンチマークテストで上回る性能を示している。特にコーディングや数学的推論といった高度なタスクでは、GPT-5と拮抗するか、むしろGeminiが優位に立つケースも確認されている。
さらに、Geminiの戦略的優位性はモバイル統合にある。Androidユーザーの約2倍が、独立したGeminiアプリではなく、OSに直接組み込まれたGeminiを利用しており、Googleの既存エコシステム、検索、Gmail、YouTubeとの一体化が進んでいる。これはGoogleがGmail, Workspace, NotebookLMなど各種サービスを持っている強みだ。一方、ChatGPTがアプリやウェブインターフェースに依存する状況とは対照的だ。さらに、YouTubeなどのサービスを持っていることも学習という観点からも強みになる。
AI市場は2026年に向けて、さらに細分化と専門化が進むだろうと予測されている。ChatGPTが汎用的な対話AIとしての地位を保つ一方で、Perplexityは検索連携型AI、Claudeは企業向け文書解析・コード開発、Geminiはモバイル・マルチモーダル統合といった具合に、各プレイヤーが独自の強みを明確にしていくだろう。この変化は、生成AIが実験的なツールから日常のインフラへと移行しつつある証でもある。
だが、OpenAIが反撃に出る可能性も十分にある。「コードレッド」宣言は危機感の表れだが、同時に開発リソースを集中投下することで、新たなブレークスルーを生み出すチャンスでもある。Geminiの「Nano Banana Pro」が画期的なように、ChatGPTが次に投入する製品が市場の流れを再び変える可能性は排除できない。AI覇権争いは、まだ先が見えない。
