ドーパミン・エコノミー2.0

by Shogo

ドーパミン・エコノミー2.0(dopamine economy 2.0)の時代になったと言われ始めた。

ドーパミン・エコノミーとは、従来の「アテンション・エコノミー」を超えて、消費者の脳内報酬系、つまり快感や衝動を直接ハックし、反応や購買行動を駆動する経済原理だ。これは単に「目を引く(attention)」ではなく、いかにして人を「止められない快感ループ」に閉じ込めるかというゲームだ。​

TikTokやInstagramなどのスワイプ動画、そしてSHEINやTemuといったショッピングのカジノ化は、みな「変動報酬」の仕組みを活用している。つまり、いつ嬉しい体験が訪れるかわからない(不確実性)が、ドーパミン分泌のトリガーとなり、ユーザーは予測不能な刺激を求めて指を止められなくなる。ここでは内容の質よりも、刺激の即時性や頻度が勝負を決め、脳は絶えず次の快感に釣られて動き続けますという。​

SHEINやTemuなどは、ルーレット型クーポンやカウントダウン、無限推薦で、購買行動をゲーム化しているそうだ。その瞬間の快感を得るガチャ的設計で衝動消費を誘発しようとしているのだ。

日本発のF2Pゲームガチャは、まさにこの構造のパイオニアだろう。ユーザーはSSRが出るかもという高揚感、つまり、ドーパミン放出の瞬間に課金していると言える。これは、これまでの、パチンコのようなギャンブルやゲームの基本原理だ。

このために、広告表現も、論理や物語性より、一瞬で脳を刺激するインパクトが重視され、0.5秒で快・不快を判別する本能モードへのアプローチが主流となってきたと思われる。YouTube広告の冒頭に大音量の叫び声や刺激音が増えたのもこの流れの一端と言える。​

しかし問題はここからだ。強まる刺激に耐性が生まれ、ユーザーはさらに強い快感を求め、やがて広告は消耗戦になる。この状況は、広告主だけでなく、生活者にも問いを突きつける。消費は、商品価値への投資なのか、それとも一時的なデジタル麻薬の摂取なのだろうか。ブラックフライデーのセールの文字が溢れるのは、衝動買いの入り口なのだろうか。​

つまり、マーケティングはユーザーの理性ではなく、本能を対象にする時代へ完全に移行したと考えている研究者は多い。今や、マーケティングは、ユーザーの意思よりも反射を優先する仕組みを実装している。その意味で、私たちはスマホと言う実験環境のギニーピッグと言っても良いのかもしれない。

もちろん、企業が悪意を持っているわけではない。ビジネス上、最も効率よく成果が出るデザインを追求し続けた結果、この形に行き着いたに過ぎない。太古の昔から人間の遺伝子に組み込まれた本能を刺激しているだけだ。

だが、この流れが加速すれば、人間の行動が、スマホとアルゴリズムのために最適化される世界がやってくる。そこでは、多くの消費が無意識の衝動に基づく。これを、インターネットユーザーは意識して、ドーパミンの罠から逃れることを考えるべきだ。まずは、デジタル・デトックスからだ。

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