私たちはインターネットのなかで生きていると言って良いだろう。生活もビジネスも学習もみんなインターネットだ。そしてそのインターネットで重要な役割を出しているのはGoogleだ。私たちは、どれほど多くのGoogleのサービスを使っているか考えてみると分かる。
Gooleは、検索エンジンでインターネットの入り口として、もう20年以上もその地位を保っている。検索のシェアは世界で90%を超える。インターネット検索の独占企業だ。その検索を広告ビジネス化したことにより莫大な広告収入を得て、世界最大の広告企業まで成長した。その豊富な資金によりYouTubeのような様々なスタートアップ企業買収して、検索だけでない、世界一のインターネットサービス会社として君臨している。しかし、このPax-Googleとも言うべきGooleの覇権にも終わりがくるかもしれない。
それは、インターネットの使い方に近い将来変化がおこるかもしれないからだ。その変化は、チャット・ボットによってもたらされそうだ。ChatGTPと呼ばれるボットは、AIの力でインターネット上から様々な情報を集め、ユーザーが求めることの答えを簡単に見せてくれるようだ。現在のGoogleが単純な関連情報のリンク先をリストで提供してくれるのとはレベルが違う話だ。このチャットボットに質問をすれば、ビジネスのアイディアやブログのネタ、休暇の計画など何でも答えてくれるようだ。ポイントは、質問に対して、その情報がどこにあるのか教えてくれるのではなく、適切な答えを作り出してくれることにある。AIチャットボットはリストではなく、シンプルな最適な答えをもたらしてくれる。
このChatGTPは、OpenAIと言う小さな企業が開発したものだ。OpenAIはサンフランシスコを本拠地とするAIの開発会社である。そのサービスとしては、AIでイメージを作り出すDALL-E2のサービスを提供している会社だ。
DALL-E2は、自分でも最近遊びで使い始めた。作りたいイメージを言葉で入力すると、それに近いものをAIで描いてくれるサービスだ。あるいは自分の撮った写真をインポートして、やはり言葉を入力すると、その写真を加工してくれる。これがなかなか面白いし、レベルも高い。
このChatGTPの話を読んで、調べてみるとOpenAIは、他にもGTP-3と言うサービスがあり、これは文章を書いたり、プログラムのコードを書いたりすることができる自然言語サービスだ。コンピューターのプログラムのために、コードを書くことを学ばなくても、そのプログラムで何をやりたいかを入力すれば、そのためのコードが自動的に出来上がる便利なものだ。文書については、現時点では英語だけの対応のようだが、そのうち多言語化するかもしれない。
Googleも次世代の検索としてチャットボットの開発をしている。しかも、このOpenAIの開発にも参加していて、当然のことながら、チャットボットの技術についてはかなり研究しているようだ。そのシステムはLaMDAと呼ばれ、小規模な実験段階のようだ。しかし、OpenAIのChatGTPは11月末のサービス公開以来、1ヵ月未満ですでに100万人以上が利用していると言う。
インターネットビジネスの歴史は、入り口をめぐる戦いであった。インターネットを実用化したのはネットスケープのブラウザだった。このネットスケープに対抗して、MicrosoftはInternet Explorerをウィンドウズに組み込んでシェアを奪った。このインターネットの黎明期に、入り口となったのが、インターネットのディレクトリを人力で作ったYahoo!だった。ウエブサイトをディレクトリの形でま止め、それ以外の様々な情報を加えたポータルサイトというビジネスモデルを作り出した。競合するポータルサイトが数多く立ち上がり、Yahoo!と争った。
その際に、検索は重要な要素であり、1990年代には、様々な検索サービスがあった。その多くが大手企業が開発するものであり、プロモーションのための広告費が大量に投入されて、競争した。1990年第後半には、すでに多くのウェブサイトが作られていたので、Yahoo!のような人力のディレクトリでは、追いつかず、ロボット検索の時代になっていた。そこに2人の大学院生が新しいアルゴリズムを持ったロボット検索エンジンを立ち上げた。それがGoogleである。このGoogleは、当初はビジネス化の見込みが立たなかったが、検索連動型広告の会社を買収して、広告ビジネスとして成功させた。ここからが今のPax-Googleとなる。
そして今巨大企業になったGoogleに、小さな会社のOpenAIが新しい技術で、入り口の役割を奪おうとしている。もう一つの入り口候補は、マーク・ザッカーバーグによるメタバースだが、これはどう考えてももう少し時間がかかるであろう。
しかし、チャットボットによる自然語検索は、現時点では大きな問題を持っている。Googleの検索のようなリスト形ではないために、広告の表示ができないことだ。多分それもあり、Googleは積極的にチャットボットの検索を導入していない可能性もある。このビジネス上の問題をどう解決するのかが今後の重要な課題なのだろう。