AppleがAI学習素材利用を交渉

by Shogo

ChatGPTが2022年11月にリリースされて以来、AIの話題でもちきりになっている。主要なテクノロジー各社は、独自の大規模言語生成AIツールを発表した。開発競争は続いており、多くのベンチャーが誕生している。また、検索のGoogleは、言語生成AIツールの普及に危機感を持って、独自の言語生成AIツールを公開し、バージョンアップされた新しいモデルを発表し続けている。

Appleは2007年に人工知能開発会社のSiri社を買収して、その技術を使ったSiriを2011年にiPhone 4Sに搭載した。これは、AIを使ったチャットのサービスの最も速い事例だ。その後、Siriを追いかけて、AmazonのAlexaやGoogleも公開されている。このようにAppleはAI技術に着目して早くから取り組んできているが、現在のAIブームでは他社と比較して目立った動きはなかった。

しかし、AppleはOpenAIのGTP-3をもとにした大規模言語AIモデルを開発中で、自然言語処理における大きな進歩達成したと、しばらく前に報道された。これは、Apple社内でテスト中で、Apple GTPと呼ばれているという。報道によれば、ユーザの質問に対して洗練された回答を提供し、自然の対話を可能にすると言われている。

そして、Appleが、大手メディア企業や出版社とAIの学習用のコンテンツの使用に関する交渉を開始したと報じられている。Appleは、AIの学習素材として、メディア企業が保有するコンテンツを利用したい意向を示しているようだ。

報道によると、Appleは複数のメディア企業の記事アーカイブを複数年にわたって利用する権利を取得するため、少なくとも5000万ドルの契約を提示したそうだ。報道機関には、NBC News、Vogue やThe New Yorkerで有名なCondé Nast People、The Daily Beast、Better Homes and Gardensを所有するIACなどが含まれる。

Appleが、メディアコンテンツの利用交渉を始めたのかは、テキストや画像などの大量のデータが必要とされる生成AI開発競争で、Appleがライバル企業に後れを取っているからだ。ようやくコンテンツを使ったAIの学習の段階まで開発が進んだということなのだろう。

そして、プライバシーの保護を重視しているAppleとしては、内容に問題がなく、許可を受けた、大手メディア企業のコンテンツだけをAIに読み込ませたいものと思われる。以前よりAppleは、インターネットから情報を取得することに消極的だ。2013年にソーシャル分析の新興企業であるTopsyを買収した後、AppleはTopsyに対し、Twitterからの情報収集をやめるよう要請したそうだ。ソーシャル分析を行う企業が、ソーシャルメディアから情報を集めなくてどうするのか不思議になる。

Appleの要請に対して、メディア企業側は慎重な反応を示しているとのことだ。過去にFacebookなどのIT企業との提携が失敗した経験から、Appleとの提携にも警戒感がある。

Appleと協力してコンテンツを提供すれば、メディア各社は、メディアの存続にも影響が出てくる可能性がある。そのコンテンツが、Appleのでデバイスを通じてユーザーに利用されて、メディア事業への影響を懸念があるからだ。このために、Appleとの提携について慎重に判断している状況のようだ。

AI時代を迎え、IT企業とメディア企業の新たな関係がまだ見えていない。今回の交渉次第は、メディア業界の地殻変動につながる可能性も否定できない。

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