インターネット利用の大きな部分は検索だが、Z世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)の間で、情報収集におけるGoogle検索離れの傾向が顕著になっているというデータがある。彼らは、従来の検索エンジンよりも、TikTokやYouTubeなどのソーシャルメディアを積極的に利用しているという。
YPulseが発表した最近のデータによると、18歳から24歳の若者の46%が情報検索をGoogleで始めるが、同年代の21%はTikTokを利用し、さらに5%はYouTubeを使っている。これに対して、上の世代の25歳から39歳の層では58%がGoogleを使用しており、この世代間での検索行動の違いが明らかだ。Z世代が動画や画像のソーシャルメディアを好む理由は、インタラクティブで直感的な情報アクセスを求めているからと思われる。
それに加えて、Googleの検索ではウエブサイトの情報にアクセスできるが、彼らが求めている情報はリアルタイムのものだということもあるのだろう。ウェブサイトの更新には時間が掛かるが、ソーシャルメディア上の情報はリアルタイムだ。
この変化は、単なる検索ツールの好みというだけではないだろう。Z世代のソーシャルメディア検索は、彼らの情報収集に対する、このような意識や価値観を反映している。Z世代がソーシャルメディア検索を好む理由は、主に以下の3つが挙げられる。
1. Google検索への不信感
今のインターネットでは情報が古い上に、広告目的に作られたサイトや低品質なコンテンツが混ざり、必要な情報を見つけにくくなっているという指摘がある。
広告目的のサイトは「Made for Advertising」(MFA)と呼ばれ、主に広告収益を目的として作られたウェブサイトのことを指す。これらのサイトはしばしば、クリックベイトや挑発的なコンテンツを使用して訪問者を引きつけ、ページビューを生成し、それによって広告収益を増す。MFAサイトは通常、低品質のコンテンツを特徴とし、ポップアップ広告や自動再生ビデオ、侵入的な広告を使用して広告収益を最大化する手法を取っている。結果的にGoogle検索結果には、このようなサイトもリストアップされる。Z世代は、こうした状況に不満を感じ、Google検索への信頼を低下させているようだ。
2. ソーシャルメディアの利便性
ソーシャルメディアは、短時間で視覚的に情報を得られるという利点がある。特に、TikTokのような短尺動画プラットフォームは、Z世代にとって非常に使いやすいと感じられているようだ。また、ソーシャルメディアでは、多様な視点や個人の体験に基づいた、生々しい情報を得ることができる。これは、Z世代が重視する価値観の一つだ。
3. デジタルネイティブ
Z世代は、生まれながらにインターネット環境に慣れ親しんでおり、ソーシャルメディアを情報収集手段として自然に受け入れている。彼らは、ソーシャルメディア上で友人や家族と交流しながら、情報収集も行うという、独自のスタイルを確立している。
Z世代が情報収集に利用する主要なソーシャルメディアは、TikTok21%、YouTube:5%だと調査結果で報告されている。やはり、動画で詳細な情報やレビューなどを視聴するのが好みということだろう。また、Instagramも、商品情報やレビューなどを検索する際に利用されているようだ。ハッシュタグを利用した検索で「タグる」という言葉も生まれている。
Z世代の検索行動の変化は、情報収集のあり方だけでなく、Googleのような伝統的な検索エンジンにとっても大きな影響を与えつつある。検索はGoogleにとって中心となるビジネスだ。2023年におけるGoogleの全体の広告収入は約237.86億ドルに上り、こお広告収入は、Google全体の収益の77.4%を占めており、Googleの主要な収益源となっている。この広告収入の内の検索広告が占める割合は56.9%に上る。これに対して、YouTube広告は10.3%、Googleネットワーク広告は10.2%のシェアだ。検索広告の動向はGoogleの業績に密接に結びついている。
Z世代の検索行動の変化が続けば、Googleに与える影響は大きい。Z世代が検索する際にGoogleを避け、TikTokやYouTubeのようなソーシャルメディアを優先すると、Googleの検索ボリュームが減少するだろう。これにより、検索キーワードに基づく広告の表示回数が減り、結果的にGoogleの広告収入に大きな影響が出る。
加えて、AIチャットボットの普及もGoogleの検索に影響を与えるだろう。AIチャットボットは、ユーザーからの質問に対してリアルタイムで回答を提供することができる。これにより、特に迅速な情報が必要な場合には、従来の検索エンジンを介するよりも効果的な解決策えることができる。さらに、AIチャットボットはユーザーの好みや過去の行動を学習し、よりパーソナライズされた情報を提供することができる。これにより、Z世代のようにカスタマイズされた情報を求めるユーザーにとって、魅力的な選択肢となる可能性がある。
Z世代の検索行動は、情報収集の新たな時代を表しているのだろう。従来の検索エンジンに代わって、ソーシャルメディアが情報収集の主役となりつつあることを示している。Googleのような伝統的な検索エンジンは、この変化に対応し、Z世代のニーズに応える新たなサービスを提供していく必要がある。だが、それは、可能だろうか。
Googleは、Z世代の検索行動の変化に対応するために、新たな取り組みを行っている。まず、AI検索機能の強化だ。AIを活用した検索結果ツール「Search Generative Experience」を拡充し、検索結果の上部に、AIによる、検索内容に関する情報やレビュー、コメントなどをまとめて表示するようになった。そして、ソーシャルメディアとの連携を強化し、ソーシャルメディア上の情報を検索結果に表示できるようにもした。それに、動画広告への注力も明らかだ。検索結果に動画の情報が優先的に表示される。これで、Z世代を取り戻すことができるのだろうか。