世界のスマートフォン市場で、iPhoneの販売台数が減少して、市場トップの座をSamsungに明け渡したことが分かった。
IDCの調査によると、2024年第1四半期の世界のスマホ出荷台数は前年同期比8%増の2億8940万台と市場は成長している。しかし、iPhoneの販売台数は前年同期比9.6%減少し、5010万台にとどまった。市場シェアも20.7%から17.3%に下落した。これは、2022年の新型コロナウイルス感染症によるロックダウン以来最大の減少幅となる。
iPhoneの売上減少で、Samsungは12年ぶりに首位に立った。Samsungの販売台数6010万台で、市場シェア20.8%を獲得している。販売台数は、前年同期比わずかに0.7%の減少にとどまっており、iPhoneとは対照的だ。この業績は、最新機種S24シリーズの投入や、AI機能への注力などが要因と考えられる。S24シリーズは、自動電話翻訳や動画編集ソフトなど、AIを活用した機能を搭載しており、消費者の注目を集めている。さらに、自動通話翻訳やビデオ編集ソフトなどのAI機能を強化したことや、高性能カメラ、明るいディスプレイ、防水・防塵、長期アップデート保証などが市場では評価されている。そして、iPhoneとは違い、幅広い価格帯の機種を展開していることから低価格帯でも健闘し、幅広い層のニーズに対応していることが奏功した。
中国メーカーも、このところ躍進している。Xiaomiは、第1四半期の販売台数1410万台市場シェア14.1%で第3位。Transsionは、84.9%増の2850万台を記録して4位となった。Huaweiは米国の制裁の影響で苦戦してきたが、2023年第4四半期に2年ぶりに上位に復活している。
Xiaomiの強みは、高性能なスマートフォンを低価格で販売することで、中国市場で大きなシェアを獲得している。Transsionは、アフリカでの存在感を増しつつあり、アフリカに限ればSamsungを抜いて市場トップとなっている。Transsionは、現地ニーズに合わせた独自路線で急成長しており、製品開発力も向上していると評価される一方で、薄利多売モデルの限界も指摘されている。これらの中国メーカーは自国内だけでなく、世界の市場の成長に合わせて幅広いニーズに対応していくものと見られる。
iPhoneの不調の原因はいくつか指摘されている。まず、中国市場での苦戦だ。中国では、XiaomiやHuaweiなどの地元メーカーが台頭しており、iPhoneeの市場シェアは縮小傾向にある。さらに、中国政府による外国企業製デバイスの職場からの排除措置もiPhoneに打撃を与えているようだ。ここにも米中対立の影が見える。
さらに、iPhoneのデザイン変更の遅れもアナリストに指摘されている。iPhone 16は大幅なデザイン変更がないと予想されていることや、AIの搭載などは2025年まで実装されない見込みであり、これが売上減少に影響している可能性があるようだ。
Appleは、6月の開発者カンファレンスでAI戦略を明らかにする予定だ。AIへの投資を加速することで、中国メーカーの攻勢に対抗していくとみられる。AIに関しては、中国国内では百度と組むとの報道もある。
また、インドへシフトをさらに進めると見られている。これまでの、中国一極集中のリスク分散とインド市場開拓を狙っているようだ。インドでのiPhoneの生産拠点拡大に加え、初の直営店も出店した。
だが、iPhoneの強みでもあり弱みでもある低価格帯の機種を持たないことが、市場シェア争いでは影響が大きいだろう。今後も低価格帯での競争激化が予想され、Appleがこの市場をどう考えるかだ。たぶん、低価格帯での競争には参入せず、市場のシェアにはこだわらない戦略を取るものと思われる。「2位じゃだめですか」ではなく、ブランドイメージと利益にこだわるのだろう。