Netflixが、アメリカンフットボールのリーグNFLと3シーズンにわたる放送権契約を締結した。これはNetflixにとって初めての主要スポーツリーグとの提携であり、同社のコンテンツ戦略の転換点を意味する。
これまでNetflixは、「スポーツに特化しない」という方針を打ち出していた。しかし、コメディのライブ配信やリアリティ番組、自前のスポーツイベントなど、ライブ配信への注力を強め、ドラマや映画に代わるコンテンツを模索してきた。特に今年は、「The Roast of Tom Brady」や「Netflix Is a Joke」ライブコメディフェスティバルなど、多くのライブイベントを成功させてきた。これらのイベントは多くの視聴者を引きつけ、ライブコンテンツへの需要の高さを示していたようだ。Netflixのコンテンツ責任者も、「私たちはコメディ、リアリティTV、スポーツなどのライブイベントに大きな賭けをしました」と述べている。
今回のNFL放送権獲得は、この流れをさらに加速させるものだ。今回の契約では、今年2024年から3年間、クリスマスに行われるNFLの試合が2試合Netflix で配信される。2025年と2026年も、少なくとも1試合が配信される予定だ。なお、地元チームの放送やNFL公式アプリでの放送は従来通り継続される。
今回の契約はNFLの人気の高さを鑑み、広告収入獲得のチャンスと捉えたと思われる。クリスマスには、アメリカでは家族揃って観戦されるNFLは、視聴者層を拡げ、広告収入を伸ばす狙いがあるとみられる。
Netflixは、広告収入の増加を目指している中で、ライブスポーツがもたらすリアルタイムでの大規模な視聴者数を利用しようとしているのだろう。特にNFLは視聴率トップのコンテンツであり、広告主にとって魅力的だ。Netflixの低価格の広告付きサブスクリプション・プランは、昨年の第1四半期に65%の成長を遂げており、今後も広告収入の増加が見込まれる。これを、更に加速する狙いがあると思われる。広告付きプランは、そもそも広告収入を当てにしたビジネスモデルだ。ある一定数を超える視聴者を集めないと、広告メディアとしての価値がない。その意味で、NFLは格好のコンテンツと言える。
AmazonやNBCUniversalなど、他の配信サービスも既にNFLとの契約を結び、ライブスポーツ放送を行っている。今回の契約で、Netflixも競争に参入し、スポーツファンの視聴者を奪い合う形となる。Amazonは2022年に「Thursday Night Football」の独占配信を開始し、NBCUniversalはNFLのプレイオフゲームをPeacockで初めて、カンザスシティ・チーフスとマイアミ・ドルフィンズのプレーオフの試合を独占配信した。これらの動きは、スポーツコンテンツが配信サービスにとって重要な役割を果たすことを示している。
また、Netflixはバスケットボールにも進出する可能性があると思われる。報道によれば、Netflixは、Apple、Amazon、YouTube TV、ComcastのNBCUniversal/Peacockとともに、最終的にはDisneyとWarner Bro.Discoveryが契約したNBAの放送権の交渉にも参加していたようだ。
Netflixは今後、NBAも含めて、メジャーなスポーツリーグの放送権獲得にも乗り出す可能性が大きい。広告ビジネスの拡大とグローバルな成長を目指す上で、ライブスポーツは非常に重要な戦略的コンテンツと位置付けられているからだ。
Netflixが、広告収入の増加と新たな視聴者層の獲得を目指して、スポーツ放送権獲得に乗り出すと、同社の巨額のコンテンツ支出を考えると、今後さらにスポーツ放送権が高騰するかもしれない。