Amazonのサイトで広告をすることは、商品を探す購入意向者が集まっていることから有効だと言われている。このために、Amazonは広告業界の主要プレーヤーとなり、昨年470億ドルの広告収入を生み出している。しかし、多くのeコマース事業者が、Amazonの広告ではなくGoogleの広告を使い始めたという記事を読んだ。Amazonの広告をが値上がりしていることもあり、より効率的に顧客を獲得するために、Googleの検索連動型広告に注目が集まっているそうだ。
Jungle Scoutの2024年Amazon広告レポートによると、ここ2年でAmazonなどのeコマース広告への投資が約10%減少した一方で、検索連動型広告への投資は50%以上増加した。特に大手広告主では、検索連動型広告が、Amazonのサイトなどのeコマース広告を上回るようになっている。そして、検索連動型広告を行う企業の95%がGoogleを活用している。
Googleの広告を使うメリットとしては、以下のような点が挙げられていた。
- Amazonと比べて競合が少ない
- クリック単価が安く、高い費用対効果が期待できる
- 新規顧客の獲得につながりやすい
- 広告管理ツールが充実している
実際、GoogleからAmazonの商品ページに誘導する広告では、平均203%の広告費用対効果が出ているとのデータもあるようだ。新規顧客獲得率も72%に上るなど、Amazonでの販売事業者にとってGoogleの検索連動型広告は重要になってきたようだ。
これまでより販売に近いほうが広告の効率が良いのでAmazonでの広告が有効で、今後も伸び続けると信じてきたことからは大きく食い違っている。事実は、想像のとおりではないということだ。
Googleは、ショッピングの場としての地位を確立するために、Amazonのeコマース事業者との連携を積極的に進めているそうだ。昨年秋には、価格重視の消費者を惹きつけるための掘り出し物検索ツールを導入し、現在ではブランドが検索結果に短い動画をアップロードできる機能をテスト中だという。
しかし、Amazonのeコマース事業者にとって真のゲームチェンジャーは、Carbon6やAmpdといったスタートアップの台頭だという。これらの企業は、Googleの検索クエリを分析し、潜在的な購入者を特定するための高度なアルゴリズムを開発した。これらのツールにより、eコマース事業者はGoogle上で購入の可能性が高いユーザーを正確にターゲティングし、Amazonに誘導することで、新たな顧客を獲得するための貴重なパイプラインを構築できるという。
Carbon6とAmpdが開発したソフトウェアは、年齢、婚姻状況、収入などの要素を考慮して、潜在的な購入者が実際に購入に至る確率を計算する。このアプローチは、Googleの検索連動型広告のコストが製品価格に直接連動していないため、中価格帯から高価格帯の商品を扱うセラーにとって特に有益だという。
この傾向は、消費者行動の変化によっても加速しているそうだ。eMarketerによると、Amazonのようなオンラインマーケットプレイスから始まるショッピングの割合は、2022年の52%から前年には40%に減少した。一方で、検索エンジンからショッピングを始める消費者は、前年の25%から30%近くに増加している。これも、多くの広告関係者が信じてきた、ショッピングするならAmazonのような販売サイトで検索するという、これまでの理論とは食い違っている。事実は理論とは違うということのようだ。
Google広告とAmazon 検索広告のコストパフォーマンスを比較すると、以下のような違いがあった。
- クリック単価(CPC)は、Amazonの方が概して低い傾向にあるAmazonのCPCは平均$0.96なのに対し、Googleのサーチ広告は$2.69、ディスプレイ広告は$0.63。
- しかし、広告の費用対効果は、Amazonの方が高い傾向にある。Googleから直接Amazonの商品ページに誘導する広告では、平均203%の費用対効果が出ているとのデータがある。
- 新規顧客獲得率は、Amazonの方が高い。Googleから直接Amazonに誘導する広告の72%が新規顧客からの売上となっている。
- 一方で、Amazonでは売上の15%前後の手数料がかかるのに対し、Googleには手数料がない。そのため、利益率を考えるとGoogleの方が有利な場合もあるようだ。
- それから、Googleの方がより幅広いオーディエンスにリーチできるのに対し、Amazonではすでに購買意欲の高いユーザーを狙えるという違いもある。
つまり、単純にクリック単価や広告効果だけ見るとAmazonの方が優れているが、手数料や広告の目的によってはGoogleの方が適している場合もあるということのようだ。
これだけみると、急速に成長しているAmazonの広告事業だが、今後の伸びについてはバラ色でもなさそうだ。だが、コストの問題についてはAmazonは修正して、Googleに反撃するだろう。それでも、より広いオーディエンスにリーチするという点では変えようがないので、eコマース事業者についても、Googleも一定の広告シェアを維持するということになるだろう。