AI不在のApple Design Awards

by Shogo

Apple Inc.が毎年開催するWorldwide Developers Conferenceにおいて行われるApple Design Awards(ADAs)は、MacintoshやiOSのソフトウェアおよびハードウェアにおける最高の革新と創造性を認めるイベントだ。その年の最も優れたアプリやゲームを称えるこのイベントだが、今年のADAsにはAI(人工知能)関連のアプリケーションがほとんど含まれていない。

1997年に「Human Interface Design Excellence Awards」として始まったADAsは、年々その範囲を広げ、Appleのハードウェアとソフトウェアの能力を最大限に活用するアプリケーションやツールを紹介してきた。今年もいくつものカテゴリーで多くのファイナリストが発表されたが、AI技術が欠如していることが異様に映る。

今年のADAsは、特にインディーズアプリやスタートアップを称えることに重点を置いているようだ。Copilot Money、SmartGym、Procreate Dreamsなど、創造性と機能性に優れたアプリが認められたが、これらのアプリにはAIが重要な役割を果たしているわけではない。AIチャットボットのような革新的な技術が見落とされていることが疑問だ。

記録的なダウンロード数を誇ったChatGPTは、AppleやGoogleの「アプリ・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれず、今回のADAsのファイナリストにも入っていない。AIを活用した唯一の例外としては、Arc Searchアプリがある。最近良く使っているが、AI機能よりデザイン性や使い勝手で使っている。このアプリにもAI機能が付加されていて、ブラウジングを支援するAIエージェントや、「Call Arc」と呼ばれる新機能を搭載しているが、AI技術が全面に出ているわけではない。

AI関連のアプリがほとんど含まれていないことがについて、いくつかの要因が考えらる。

まず、Appleは、App Storeについて規制当局から疑問視されている時期に、インディーズ開発者や小規模スタートアップに焦点を当てることで、革新と創造性を奨励しているのかもしれない。これらの、インディーズ開発者はしばしばリソースが限られており、AI技術を実装するための資源や専門知識が不足している。このため、Appleは、AI技術よりも独創的で使いやすいアプリケーションを評価したのかもしれない。

また、Appleは長年にわたり、ユーザープライバシーとデータセキュリティを最優先にしてきた。AI技術、特に機械学習やデータ分析を行うアプリケーションは、大量のユーザーデータを必要とすることが多く、プライバシーのリスクを伴う。現に著作権を巡っての訴訟や問題のあるアウトプットが物議を醸している。Appleは、これらのリスクを慎重に評価し、プライバシー保護や著作権の問題の観点からAIアプリケーションを避けたとも考えられる。

AI技術は急速に進化しているが、まだ完成していないとも考えられる。多くのAIアプリケーションは、その性能や信頼性において課題を抱えている場合が多い。Appleは、ユーザー体験を最優先にする企業であり、未成熟な技術に依存するアプリケーションを受賞対象とすることに慎重になっているのかもしれない。

それから、確実なのは、Appleの自社のマーケティング戦略だ。Appleは、独自のエコシステムを強調する。AI技術に依存するアプリケーションは、GoogleやMicrosoftなどの他の大手企業の技術に依存していることが多く、Appleのエコシステムとは異なるプラットフォームを使用している。Appleは自社技術に焦点を当てたアプリケーションを優先して評価している可能性があるだろう。

AppleがAI関連のアプリケーションをApple Design Awardsで認識しない理由は、インディーズ開発者の支援、プライバシーとセキュリティへの配慮、技術の成熟度、マーケティング戦略、といった複数の要因が絡み合っていると考えられる。Appleが自社のエコシステムをの中でAI技術を取り込むまでADAsでAI関連が選ばれることはないだろう。

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