電気自動車(EV)業界に大きな変化が訪れている。ひとつは、現実味を帯びてきたトランプの再選だ。トランプ大統領が再びワシントンに戻るとEV市場は補助金の廃止などで大打撃を受けるだろう。
もうひとつは、EVのチャンピオンのテスラに陰りが見えてきたことだ。かつてアメリカ市場で無敵を誇っていたテスラのシェアが、初めて50%を割り込んだ。Cox Automotiveの最新データによると、テスラの市場シェアは2024年第2四半期に49.7%に低下し、前年同期の59.3%から大幅に減少している。
第2四半期の米国のEV販売台数は前年同期比11.3%増の33万台超と過去最高を更新。市場全体に占めるEVの割合は8%に達し、前年同期の7.2%から拡大した。アメリカ人はこの期間中に33万台以上のEVを購入またはリースしておりEVそのもの市場は堅調だ。
テスラの失速については、いくつかの要因が指摘されている。競合他社の追い上げがまず挙げられる。GMやフォード、現代自動車、起亜自動車、BYDなど大手メーカーが次々と高性能かつ手頃な価格のEVを投入し、テスラに対抗している。特に現代自動車と起亜自動車は多様なEVラインアップで消費者の支持を集めているそうだ。各社ともに、次々と300マイル以上の航続距離を持つEVを投入し、テスラの性能に匹敵する、あるいはそれを上回るモデルを提供している。また、幅広い価格帯でEVをラインナップしており、BYDは200万円を切る手頃な価格帯のモデルから高級車まで展開している。一方、テスラは主に高価格帯に注力しており、性能面・価格面での競争優位性が揺らいでいる。
2番目の理由は、テスラ車のラインアップの陳腐化だという。「モデルY」など人気車種の発売から時間が経過し、ラインアップの古さが目立ってきている。一方、ライバル各社は次々と新モデルを投入しているために、テスラのブランドの持つ当初のオーラが失われつつあるようだ。ここは、やはり新モデルが必要なのだろう。例えば、最高級モデルと廉価版モデルの投入が望ましい。
イーロン・マスクCEOの政治的発言も影響しているという説もある。ソーシャルメディア上で右派寄りの発言を繰り返したことで、リベラル層が多いEVユーザーの反発を招いた可能性がある。特に最近のトランプ支持と見られる発言も影響しているかもしれない。
Nasdaqの主要銘柄のテスラの株価は、2024年4月に付けた今年の安値から値上がりしているようだ。一時より株価は下がったとはいえ、時価総額は8,000億ドル超と巨大なものだ。これなら、イーロン・マスクCEOに報酬も払えるのだろう。ただし、トランプ再選なども含めての先行きには不透明感もある。株は買っていないので、どちらでも良いのだが。
それでも、テスラは依然として米国EV市場で約半分のシェアを維持しており、世界で最も時価総額の大きい自動車メーカーであることに変わりはない。自動運転技術の改良や新車の投入、エネルギー事業の拡大などを通じて、再び市場シェアを拡大していくこともあり得るのだろう。株は買わないが、イーロン・マスクCEOは次の手を考えているだろう。