AIツール「WPP Open Pro」

by Shogo

世界最大の広告会社グループのWPPがAIツール、「WPP Open Pro」を発表した。これは「戦略・制作・配信」を単一UIで運用するAIツールであり、WPPはこの開放によって、WPPの市場アクセスを中小企業まで広げることと収益モデルの多層化を同時に狙っているそうだ。​

Publicisは「CoreAI」というツールを発表していたが、こちらはPublicisが自社が使う、データ資産と社内業務まで一気貫通するシステムという位置づけで、「WPP Open Pro」とは、対象ユーザー、強み、実装範囲が異なる。​

WPP Open Proは、WPPのAIプラットフォーム「WPP Open」を一般の広告主が直接使えるようにした新モデルで、計画(Plan)・制作(Create)・配信(Publish)の3機能を統合している。​

ユーザーはWPPの独自データ・パートナーデータ・業界データで戦略を設計し、広告主の方針にあったクリエイティブを素早く生成し、主要プラットフォームへ直接出稿またはOpen Media Studioに配信することができる。​

主な対象はフルサービスの代理店を使いにくい中小・地域広告主やパフォーマンス重視のチームだが、既存の大手広告主にも簡易版AIツールとして提供することを意図しているそうだ。​​

WPPの意図と戦略

  • 第一に、WPPが狙える市場の拡大である。WPPは「マーケティングサービスの提供方法を変革し、より多くの広告主にAI時代のツールを届ける」と明言し、外部開放をWPPの成長エンジン化する姿勢を示した。​
  • 第二に、収益モデルの多角化だ。広告作業工程のタイムチャージから、アクセス費用や使用ベースのプラットフォーム収益を上積みし、アップセルでOpen Media Studio等のさらなる高度運用へ誘導する導線を設ける。​
  • 第三に、競合状況への適応である。プラットフォーマーの生成AIサービスが浸透する中、同等のスピードと利便性を自社ツールで提供し、広告会社としての差別化をデータ統合と意思決定支援に特色を出す。​

生成AIツールの普及で、他の分野で起こっていることと同様に、これまで広告業務を外注していた広告主側の内製化・自動化ニーズが高まり、AIで企画・制作・運用を一気通貫で回す期待が顕著に高まっている。このようなことから、AIにより広告会社の業務のコモディティ化が進んでいくだろう。この状況で、PP Open Proが受け入れられるだろうか。

AIツールが実務にもたらす変化

  • 速度と頻度の最適化: 戦略立案から出稿までのサイクル時間が短縮され、A/B実験やクリエイティブ反復の回数が飛躍的に増える。​
  • 品質の標準化: 広告主の表現制作方針とチャネル最適の組み込みにより、少人数でも一定品質を担保しやすくなる。​
  • ハイブリッド運用: 内製と外注の自由度が高まり、機動的なキャンペーン運用に柔軟に対応できる。​

Open Proは内製化で、企画・制作・配信のあらゆる広告業務運用を簡略化・自動化し、WPPに新たな市場と収益をもたらす戦略装置として開発されているようだ。​

広告業界は、テクノロジーによるスピード・データ・意思決定品質を競う時代へ移行しており、AIは作業の自動化に留まらず、マーケティングを根本から変革し始めている。

もう一つ思ったのは、WPPのようにツールを外販する時代が来たということだ。広告会社勤務時代に思っていたが、広告会社は、全て一からカスタム・メイドで業務を行う。これは、マーケティングサービスを行うB2B企業としては当然のことだ。だから、あまりにも効率が悪いので定型化された商品を売れないかといつも思っていた。その時点では、マーケティングサービスをこなせるツールなど思いもしなかった。それは、当然のことながら当時は実用的なAIがなかったし、そのようなツールが使えるデータも限られていた。そのような時代は遠くなった。

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