コムキャストは、アメリカ・フィラデルフィアに本社を置くメディア・エンターテイメント企業である。私がアメリカにいた頃には、大手ではあるが、地域に何社もある大手のケーブルテレビ会社の1つだった。その後、GEからNBCユニバーサルのを買い取り、さらにイギリスのメディア企業のSkyをルパート・マードックから買い取っている。それで、今は、アメリカの3大ネットワークの1つのNBC、ユニバーサル映画などを経営するアメリカのエンターテイメント・メディア企業のトップの会社と言っても良い。
日本との関連でいえば、遊園地のユニバーサル・スタジオの運営も行っており、大阪のUFJも完全子会社化している。またスカイの買収により、日本のスカパーも関連会社となっている。この夏の東京オリンピックの動向は、放送権を持つNBCの発言権が大きいので、コムキャスト次第とも言える。
このように、ケーブルテレビから始まり、地上波テレビや衛星有料放送までをカバーする巨大な放送事業者に成長した。
しかし、ブロードバンドが普及し、Netflixのような映像配信がエンターテイメントの中心になっていく中で、コムキャストも映像配信に参入した。その名称は、Peacockで、これはNBCの会社のロゴが孔雀の形をしていることからきている。
コムキャストの3月現在の数字は以下のような状況である。
1,900万件のケーブル契約、これは12月から50万件減少
3,100万件のブロードバンド・インターネット接続契約、12月から46万件増加
4,200万件の映像配信Peacock契約、これは900万件の増加。
コムキャストを収益面から見ると、ケーブルテレビビジネスは契約数が減少しているが、まだ収益を上げている。これは、投資が終わり、回収段階にあるためと思われる。一方急速な契約件数の増加にもかかわらず、Peacockは赤字となっている。そして、今年も赤字の見込みが発表されている。
これはNetflixなどに対抗して、コンテンツを充実させるためだ。オリジナルの番組やスポーツの番組がないと、定額映像配信サービスの競争には勝てない。この市場にはNetflixだけではなく、Amazon PrimeVideoやHuluなどの老舗があり、Disney+、HBO MAXなどが参入して、激しい顧客競争が続いている。
本業の利益を導入しても、定額映像配信サービスでビジネスを立ち上げようとしているのは、そこに未来のエンターテイメントビジネスの中心があると考えているからだ。これはコムキャストに限ったことではなく、Walt DisneyやViacomCBS、 AT&T Warner Mediaなど各社同様の戦略をとっている。
同様の事は日本でも行っており、NetflixやAmazon Prime Videoに対抗してU-NEXT、FOD Premium、TSUTAYA TVなどたくさんの会社が顧客を奪い合っている。この争いに勝つためには、独自の良いコンテンツをどれだけ持つかが勝負だから、ここに資金が投入されるため、利益が出るのはずっと先と言う体力勝負が続くことになる。まさにレッドオーシャン状態だ。先行するNetflixやAmazon Prime Videoに誰が追いつくのか。