感染症との戦いと平均寿命

by Shogo

平均寿命と病気との戦いの記事をNYTで読んだ。読んでわかったのは、感染症との戦いは、生物である人類の終わらない戦いということだ。それでも、この数百年に渡って、人類は数々の成果をあげて、寿命を伸ばしてきている。

100年前のスペイン風邪と呼ばれるパンデミックの際には、1918年から1919年かけて、世界で1億人が亡くなったそうだ。スペイン風と呼ばれた病気は瞬く間に広がり、感染者の死亡率は20%に近づいていた。不思議なことに、この病気は、特に若い成人に致命的であった。理由はよくわからない。

このために、この時期に大量の死亡者が出たので当時の平均寿命は、大幅に下がった。アメリカの平均寿命は54歳だったものが47歳まで。イギリスでは54歳が41歳。インドでは、それは30歳以下になってしまった。

それ以降は第二次世界大戦の時に少し下がったことを除けば、平均寿命は順調に伸びている。アメリカやイギリスでは80歳、インドも70歳だ。この100年で、平均寿命は倍になったと言うことだ。

平均寿命が伸びてきた理由は平均寿命が伸びてきた理由は、たくさんある。

科学的な発明や発見だけが、寿命を伸ばしたわけではなく、ライフスタイルの変化も大きく貢献している。手を洗う習慣やタバコをやめること、ワクチンを受けること、パンデミックの際にはマスクをするなどの習慣が寿命伸ばすことに大きく貢献している。

数百年に渡って、スペイン風邪以前から、平均寿命は伸びてきていた。

平均寿命が伸びるためには、子供の死亡を抑え、老人を長く生きさせることが必要だ。平均寿命の記録は17世紀から残されている。17世紀当時の平均寿命は35歳だった。これを伸ばした最大の要因は子供を病気にしないことだった。当時は、子供の5人に2人は大人になる前になくなっていた。

平均寿命が延びた要因は、ワクチン接種、細菌の発見、抗生物質の開発の3つと記事では整理されている。この3つが、行われる以前は、天然痘や細菌感染から、若くして病気で亡くなることが多かった。

イギリスの貴族の寿命の研究よれば、18世紀ごろからイギリスの貴族の平均寿命は伸び始めていた。天然痘は、当時は子供を殺す致命的な病気だったが、エドワード・ジェンナーが牛痘接種を発明したのは、1800年だから、それ以前から寿命が伸び始めた。理由の1つは、人痘摂取であった。

イギリスのエドワード・ジェンナーは、牛の天然痘の菌を植え付けることで、天然痘が発症しない予防接種を発明した。この時に、ジェンダーは、牛から取った病原菌を使ったので、ラテン語で牛を意味するVaccaから牛由来の物質をVaccineと呼びここから、今のワクチンの言葉ができている。

エドワード・ジェンナーが、予防接種を発明するのが1800年だが、これ以前からイギリスの貴族の間では、人痘摂種が行われて始めていた。人痘摂種とは、天然痘の患者の膿やかさぶたを健常者につけて免疫を獲得させる方法だ。

中国では11世紀から行われて、17世紀までには中国、インド、ペルシャまで広がっていたと言われている。17世紀までには日本でも中国から伝わったのか、江戸時代から行われていたようだ。

イギリでは、コンスタンチノープルに赴任した大使の夫人が、現地でこの方法を知り、自分の子供に接種させた。この方法が、夫人を通じて、イギリスの貴族社会に広まっていたようだ。

しかし、エドワード・ジェンナーの人工接種はは、人痘摂種に比べると安全性が格段に増し、庶民にまで広がったために、天然痘の死亡は著しく減少していった。

しかし、他にも、まだたくさんの子供を殺しているものがあった。産業革命により都市化が進んだ、イギリスやアメリカの大都市で子供の死亡が多発した。理由は、なかなか突き止められなかったが、牛乳が原因ということがわかった。牛乳に発生する細菌が子供を殺していたのだった。これを発見したのはフランスのパストゥールで、煮沸により殺菌をする方法を見つけた。これにより子供の死亡が減少し、また平均寿命が伸びることとなった

そして、20世紀に入ってさらに寿命伸ばす発明がなされた。飲み水の改良だ。飲み水を殺菌するために塩素を混ぜることが始まったからだ。これにより飲み水から病気になる人が減った。

ワクチンで守られ、細菌や水や牛乳が殺菌されても、それでも病気になった際には薬が必要だ。この薬を発見したのは、イギリスのアレクサンダー・フレミングだ。彼は1928年に実験室に放置した青カビが細菌の発生を止めていることを発見して、ここからペニシリンが開発された。抗生物質の発見により病気にかかっても体内の細菌を死滅させることができるようになったために、病気から回復する確率が高くなり、さらに平均寿命は伸びることになった。

人類の歴史の中で、何万年にもわたって戦ってきた敵である感染症は、過去200年にわたる科学や工夫のために、戦況は人類のほうに傾いてきた。そのため平均寿命はこの100年で倍になってきているが、それでも人類はまだ感染症との戦いに完全に勝利したわけではない。唯一知られている完全に撲滅された病原菌は天然痘だけと言われている。インフルエンザや風邪は、まだ治療が確立しているわけではないし、今回の新型コロナウィルスについても治療法が見つかるまでのはまだまだ先だろう。数万年にわたる感染症の戦いは今後も続くことになる。

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