Googleの広告戦略

by Shogo

これまで広告が一切表示されなかったAIモードの検索結果に、ついにスポンサー付きの広告が表示され始めたようだ。これは、予測していた通り、Googleが、AIが生み出すトラフィックを本格的に収益化する段階へ移行したことを示している。

かつて20数年前Googleが登場したときには、それまでも見たこともない真っ白な空間に検索窓だけがあった。そして検索ワードを入れると検索結果のウェブサイトのリストが表示される。そこには広告はなかった。これが何年も続いてGoogle検索を収益化するまでに、何年もかかった。と言うよりも、当時はまだ検索連動型広告(リスティング広告)と言う仕組みそのものがなかったからだ。後にGoogleは、検索連動型広告は開始して巨大企業になる。だが、検索連動型広告の仕組みやアイディアはGoogleが開発したものではなかった。GoTo.com(後のOverture Services)が、それを開発して、後からGoogleもそれを真似た。AIモードにも同じことが起こっている。

当初、AIモードは、ユーザーを新しい検索体験に慣れさせるための広告フリー空間として機能してした。しかし、ユーザーの利用が定着し、AI検索がもはや実験段階ではなくなった今、その空間を広告ビジネスの機会と見なすのは、至極当然の流れだ。

広告の表示位置は、現状ではAI生成の回答文の最下部だ。通常の検索結果で広告が上部に表示されるのと比べると、控えめな配置と言えるだろう。また、「Sponsored(スポンサー)」ラベルが明確に付与されており、これは法規制遵守とユーザーへの透明性を保つための配慮と思われる。

しかし、この現在の配置は、あくまで実験の初期段階と捉えるべきかもしれない。Googleがクリック率(CTR)と収益を最大化するために、将来的に広告をより目立つ位置、例えばAI回答の中間や、さらに踏み込んで回答文自体に自然な形で統合してくる可能性があるだっろう。

Googleの主な収益源は広告だ。Alphabetの収益のうち、約80%以上は広告が占めており、その中心にあるのが検索連動型広告だ。つまり、検索の進化と広告収益の両立は、同社にとって死活問題だ。

AIモードが導入された当初は、あえて広告を表示しないことで、ユーザーの慣れと信頼を得る戦略が取られていた。まるで多くのビジネスが「初回は無料」でサービスを開始するように、まずは体験させ、のちに収益化する仕組みだ。

  • AIモードの広告は、次のような特徴が見られる
  • 広告はページ最下部に表示
  • AIによる回答の末尾に、オーガニックなリンクカードに似た形式で広告が挿入される。
  • サービス系クエリで表示されやすい
  • 特に「修理」「ペットグルーミング」「地域密着型サービス」など、即時性と購買意欲の高い検索ワードで広告が表示されるケースが多い。
  • Google Labsから一般向けへ拡大中

当初はLabsでの試験運用だったが、現在は一部の一般ユーザーにも反映され始めているようだ。

これらの要素は、Googleが本格的にAIモードを広告収益の柱に据えようとしている証拠だ。ユーザー体験を棄損することなく、広告のCTR(クリック率)をどう最大化するかが、今後の微調整だろう。

この動きの背景には、ChatGPT、Perplexity AIなど、広告非依存型AIプラットフォームの台頭がある。これらのツールは、広告に依存しないクリーンな体験をウリにしている。しかし、それは裏を返せば、初期のGoogleのように、持続可能な収益モデルが未成熟であるということでもある。Googleはその逆で、強固な広告インフラを既に持ち、ユーザー数も圧倒的だ。広告事業では、大きく先行している。

問題は、従来の広告モデルを、どうAIモードに溶け込ませるかだ。広告を前面に出しすぎればユーザーが離れる。だが隠しすぎれば、広告主にとっての魅力は薄れる。Googleが慎重な段階的導入を行っているのは、このジレンマに対する対応だろう。

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