12月になった。師走は、その年を総括するコンテンツが、あちこちに登場する。今年は、この文脈でYouTubeが、動画視聴を振り返る「YouTube Recap」をメインサービスに導入した。だだし、YouTube の公式アナウンスによれば、Recapはまず米国とカナダで公開された後、今週中に他の国々へのグローバル展開を予定とされているため、現時点では日本ではまだ見えない。
Recapは最大12枚のカードで構成される。
今年もっとも視聴したチャンネル、関心ジャンルの偏りと広がり、視聴タイプ診断を可視化機能だという。たとえばスキル系動画に傾倒したユーザーには「Skill Builder」というラベルが与えられ、前向きなストーリーや癒やし系コンテンツを好めば「Sunshiner」、既存の枠に挑むオリジナル系にハマれば「Trailblazer」と分類される。ほかにも「Wonder Seeker」「Connector」「Dreamer」など、性格診断ゲームを思わせるネーミングが並ぶ。
同様の機能としては、Spotifyが以前より提供している「Spotify Wrapped」がある。これを使って、今年は、こんな音楽を聴いて生きてきたという自分の歴史をSNSに貼り付けられる。
YouTube Recapも、まったく同じだ。今年は〇〇を1,200時間観たより、「私はSkill Builderとして一年を過ごした」のほうが語りやすく、SNSでの反応も引き出せるだろう。通勤中にニュースを見て、夜は料理動画だどの生活が実感できる。つまり、一年の可視化されたライフログと言える。このネーミングが、どれだけキャッチーかで広がりが期待できるだろう。
Recap のローンチに合わせて、YouTube は毎年恒例のトレンドチャートも公開している。 クリエイター、ポッドキャスト、楽曲といったジャンルごとに、1 年を代表する存在を一覧化し、プラットフォーム全体の「025 年の顔を可視化している。2025 年は、クリエイター部門で MrBeast が 6 年連続の No.1 に立ち、ポッドキャストでは「The Joe Rogan Experience」がトップ、楽曲では Bruno Mars と Lady Gaga の「Die with a Smile」が首位を獲得した。 これは、今年は世界は何を見ていたのかを振り返る文化カレンダーだ。
広告ビジネスへの影響
YouTube Recap の登場は、単なる機能追加ではなく、広告ビジネスにいくつかの変化をもたらす。
「視聴履歴データの可視化」によるエンゲージメント
Recap というイベントは、12 月という広告在庫が高騰する月に、ユーザーのログイン頻度と視聴時間を底上げする仕掛けになる。 ユーザーが、自分の Recap を確認し、そのままおすすめ動画や関連プレイリストに流れ込めば、広告インプレッションは自然に増え、YouTubeにとって在庫拡大、広告主にとっては年末の追加リーチが生まれる。
「自己ブランディングとしての視聴履歴」
ユーザーが「Skill Builder」や「Sunshiner」といったラベルを掲げてシェアすると、その周辺には「学習」「ポジティブ」「挑戦」といった意味が立ち上がる。 広告主は、こうした性格分類に自社ブランドを対応させることで自己演出したいユーザーとの相性を高めるクリエイティブが制作が容易になる。
ソーシャルシェアを通じた「二次的広告在庫」の誕生
Spotify Wrapped がそうであったように、ユーザーが自発的にスクリーンショットを X や Instagram ストーリーズに投げると、それ自体が、YouTube というプラットフォームの広告枠になる。 広告費を投下していない広告主でも、公式アカウントで自社の Recap をシェアしたり、ユーザー投稿と絡んだキャンペーンを行うことで、他社の広告の上で便乗リーチを獲得することができる。
YouTube Recap の登場で、Spotify Wrapped と同様、広告主のメディアプランの中で12 月のキャンペーンを設計するするようになるだろう。 広告主は、今年このチャンネルでどれだけ見られたのか、視聴者の生活のどこに位置づいたのかを可視化する自社版 Recap 企画を立ち上げ、YouTube のトレンドチャートや Recap と連動させる形で、自社の広告キャンペーンを始めるかもしれない。
