日経の記事にデジタル人民元のことが出ていた。中国の10の地域で実験が開始されており、デジタル人民元の財布を開設した人は2,087万人を超えると言う。中国の人口を考えると微々たるものだが、実験として考えると大規模なものだ。
この実験は2020年の10月に深センで始まり、それが地域を拡大したものだ。デジタル人民元の使用上限は1日5000元(約85,000円) 1回2000元と言うことだ。通常の生活では普通に使える金額で実用に耐える設計になっている。
使用方法はスマホで、QRコードの決済と同じような感じだと言う。北京にいた時に、中国の紙幣は劣化が激しく、見るからに不潔そうに見えたが、紙幣を流通させるコストは中国のような巨大の国では莫大なものになるだろう。それがデジタルになると、かなりのコスト削減になる。
しかし中国政府の狙いは、別のところにあるのだと思う。一つは現金で行われる取引の把握だ。中国のビジネスでは裏金が必要となるケースも多い。すべてデジタルになれば、税金逃れの取引は不可能になる。そこに達するまではまだまだ時間がかかるが、狙いはそこにある。
それからもう一つは、デジタル人民元を世界の基軸通貨にしようと言う狙い。現在はドルが担っている基軸通貨の役割を、デジタル時代にはデジタル人民元が担うと言う目的があると思われる。「一帯一路」構想と合わせて、世界的な普及を目指していると思われる。
世界のいくつかの国では、中央銀行が発行するデジタル通貨の実験が始まっている。しかし、中国の規模で行っている国はまだない。当然デジタル化が進んでいない日本ではまだ調査段階だ。
しかし、通貨のデジタル化は止めようのない流れであり、確実に近い将来現金はなくなると考えている。
昨年来政府は、キャッシュレス決済を普及させるためにポイント還元を行い、普及に努めた。その結果、QRコード決済等のキャッシュレス決済は少し普及した。MMD研究所が2021年初めに行った調査によればスマホ決済行ったことのある人は41.2%となっている。QRコード決済の認知率は93.9%あるが、現在も利用している人は33.3%に過ぎない。
利用されているQRコード決済サービスの上位は、PayPay、 d払い、楽天ペイと言うことだスマホの普及率を考えると、まだまだ利用率は低い。
コロナウィルスによるパンデミックにより、現金を触りたくないので、なるべくスマホ決済やクレジットカードの利用を行っているが、まだ世の中全体では現金が好まれるようだ。いや、好まれると言うのは少し言葉が違うような気がする。単純に慣れの問題で、今までのように現金を使っているだけと言う気もする。
もう一つは、QRコード決済等の決済方法を導入していないビジネスも多いことだ。最近、久しぶりに切手を買いに郵便局に行ったが、現金以外では切手を買えなかった。デジタル庁創設とか言われているが、デジタル技術の導入と啓蒙については遅れているのが今の日本の現状だ。