トランプ政権時代には、TikTokの話題といえばプライバシーの問題であったり、それに関連する米国資本への移行であったりとした。しかしバイデン政権になると、その話は全く消えてしまった。
そして、TikTokはパンデミック時代にも引き続き人気があり、流行の発信源になっている。全世界の月間アクティブユーザは、現時点で10億人を超えている。しかもこのユーザは非常に若く、10代が中心だ。
TikTokと若いそのユーザーは、数多くの流行を生み出し、新しいスターを作り出している。TikTokで人気に火がつき、グラミー賞受賞したLil Nas Xはその1人だろう。また歌手のWalker Hayesは、レストランチェーンのApplebee’sの名前を入れた曲に合わせて、娘と踊る動画を投稿した。その動画に人気が出て、Applebee’sは、その曲を使ったテレビキャンペーンを実施している。それ以外にも、商品が登場するたくさんの動画が人気になったりしている。
商品が紹介されたりして話題になることがあるが、TikTokはそのような動画から収入を得ているわけではない。TikTokの収入源は主に広告である。収益の多様化のために、サブスクリプションや投げ銭もテストを行っているが、どのようなビジネスになるかはっきりしない。
そのTik Tokの米国内の広告収入は、調査会社eMarketerによると、13億ドルにも満たない。これは、Twitterの22億ドル、LinkedInの26億ドル、FacebookとInstagramの480億ドルであるのに比べると、かなり見劣りする。
広告主がTikTokに広告を投下することに躊躇するのは、10代の若いユーザーたちが投稿する可能性のある問題のあるコンテンツと同時に広告が表示されることを怖れるからだ。日本では一時、バイトテロと言われる好ましくない行動をソーシャルメディアに投稿することがあった。TikTokで同様のことが起こる可能性が高いと、多くの広告主が考えている。
だから、TikTokが10代に人気があっても広告メディアとして使用するのに躊躇する広告主が多い。この問題に対処をするために、TikTokはAIと人間を使ってコンテンツの内容を分析して、対応する仕組みを発表している。
そして広告に関しては、広告主と投稿者の間を結びつける機能を果たす自動システムを導入すると発表した。これにより、広告主は適切なコンテンツの投稿者と結びついて、Tik Tok上にコンテンツとして商品の露出ができる。言ってみればタイアップ広告のようなものだ。投稿者も収入を得ることができ、TikTokももちろん収入を得る。話としては三方良しの考えだが、果たしてどうなのだろうか。
TikTokは、コンテンツのリスクの問題もあり、また昨年はトランプ政権の攻撃、今年は中国政府がIT企業を厳しく管理しようとしていることから、広告主もリスクをまだ感じているものと思われる。新しい取り組みが効果を上げるかどうかは、来年にならないとわからないだろう。