Facebookが、以前発表していた13歳以下向けのInstagramのアプリのリリースを延期すると発表した。
幼少時のスマホの過度な使用について疑問が多い中、子供向けのアプリの開発は批判の声が多かった。しかも、Facebookの社内調査で、Instagramが10代の女性の精神の健康に大きな影響を与えていることを、マーク・ザッカーバーグを含めトップの経営者たちも知っていたということがリークされた。精神の健康に影響与えると分かっていながら開発を進めていたことについては、Facebookは非難されるべきだろう。
Facebookは社会的に影響力の大きい会社だ。全世界の月間アクティブユーザーは、29億人もいる。これは、国別の人口で言えば、世界3位のアメリカ合衆国に次いで、4位の規模だ。そこには、29億人分の様々な投稿や情報が溢れている。だからこそ、個人情報の保護、ヘイトスピーチ、フェイクニュースに関して問題が起こり、何度も調査の対象となってきている。
確かに、Facebookには、多くの利点がある。現実やネット上の人間関係を活性化したり、優秀なコミニケーションツールとして交流を容易にしてくれる側面は否定はできない。その一方で、強い中毒性も指摘されてきている。「いいね」を多くもらいたいとか、新しい投稿をしたいとか、Facebookを常に意識してしまう。これは、自己承認欲求や自己顕示欲のような人間の側面をさらに拡張しているようだ。
そもそも、スマホそのものが強い中毒性を持つと言われている。精神科医のアンデシュ・ハンセンの「スマホ脳」によれば、私たちの脳は何十万年もかけて、常に新しい情報に触れる欲求を持つよう進化してきた。それは自らの生存のために、周辺の出来事に注意を払う必要があったからだ。
この進化の過程で、新しい情報をとるたびに、脳にドーパミンが放出され、それによって幸福を感じる。この生存のためのメカニズムが、スマホとソーシャルメディアによって悪用されていると言える。常に新しい情報に触れて、幸福を感じたくなるのだ。これは私たちの脳に組み込まれた根源的な機能などで、精神的な力で押さえ込むのは難しい。それが10代以下の子供ではさらに難しい。だから10代以下の子供は中毒になりやすいと言う。
常にスマホに接触をして情報を集め、集中力が維持できなくなる。これは、この10年ほど子供だけではなくて多くの人が経験している事だ。私も、たまたま、スマホが手元にない時も、ついスマホを探している自分に気がつくことがある。脳は、スマホを通して、新しい情報を探し回っている感じだ。
Facebookは昨年YouTube Kidsの開発を担当した人を採用して、Instagram Kidsの開発を進めていた。だが、Facebookの、子供向けは健康被害がある可能性があるという社内資料が外部にリークされ、今回、開発を延期すると発表された。このチームは、今後は10代向けの別のプログラムを作りその際には、両親が管理できるような機能を組み込むと発表している。
問題は、それで充分かと言うことだ。普段からスマホを使い続けることが、子供の脳や精神にどのような影響与えるのかと言う事は、十分に証明されている。多少は、新しいテクノロジーに触れて、慣れることも必要なのかもしれない。だが、その「多少」ができないのが子供だ。
スティーブ・ジョブスは自らの子供にはスマホやタブレットの使用を制限していたと言う。彼だけではなく、子供がスマホやタブレットに触れるのを休日だけで、時間を制限するとか、全く触らせないと発言しているテクノロジー企業のトップも多い。
私たちの生活は、スマホのもたらす便益で快適なものになってきた。多くのことがスマホを通じて行える、時間の節約になることや、生産性を上げることも数多くできるようになった。実際このブログも、iPhoneの音声認識で書いている。自分でキーボードを打つよりも圧倒的に早い。このようにスマホが私たちの生活を変えているのも事実だ。
ただ一方で、強い中毒性を持ち、集中力が続かなくなるといった負の側面もある。だからこそスティーブ・ジョブスが行ったように、子供のうちはスマホなどを触れさせないということが、正しいと思う。