先週COP26がグラスゴーで行われ、岸田首相が出席した。日本の温室効果ガス排出を2050年に実質ゼロにする方針や2030年に2013年度比で46%削減する目標を説明したが、石炭火力発電中止については言及しなかった。このために国際環境NGOのCANは、地球温暖化対策に後ろ向きな国に送られる「化石賞」を日本に与えると発表した。
今回の議長国のイギリス、ジョンソン首相は、参加国に石炭の使用中止を求めていた。原子力発電に頼れない今、石炭火力発電は重要な電力の供給源として使い続けなければ持たないのだろう。しかし、それは以前から分かっている問題で、再生可能エネルギーに置き換える努力を怠ってきたから、今のこの状況がある。
40年も前に、エイモリー・ロビンスが書いた「ソフトエネルギーパス」と言う本を読んで、それ以来、原子力発電など大型の発電設備ではなく、小型の再生可能エネルギーを市町村に作っていくべきだと考えている。あの頃から、日本だけではなく、世界の国々が取り組んでいれば温暖化の問題は今よりも多少改善されていたのではないかと残念だ。
石炭の使用を中止すると宣言した国は40ヵ国以上あり、最も環境を破壊する形の化石燃料である石炭の使用中止も視野に入ってきている。多くの国がおよそ10年程度で石炭の使用を中止する。
しかし、今回のこの宣言をした国に、残念ながら日本を始め重要な国が入っていない。合わせて、世界の石炭の3分の2を使用する中国とインドは入っていない。また世界11位の石炭使用国であり輸出国であるオーストラリアも不在だった。石炭火力発電で燃料の電力の5分の1を供給しているアメリカも宣言に参加しなかった。これでは石炭の使用中止が視野に入ってきたと言うにはあまりにも実態が伴っていない。宣言に参加した国が全部石炭の使用を中止しても、二酸化炭素を排出し続ける石炭を燃やす量は、今とあまり変わらない。
石炭が、温室効果のある二酸化炭素を1番多く排出する元である。何かの問題を解決するにはその最大の要素を見つけて、それをまず解決するのが最大の対策になる。そういう意味で石炭は重要なCOP26の課題であるというジョンソン首相の判断は正しい。
温暖化が破滅的な段階に入る、気温の1.5度上昇を食い止めるためには、石炭は喫緊の課題である。1.5度上昇を食い止めると言う目標は、すでに1.1度上昇している現場から考えると、あまり時間は残されていない。その意味で日本を始めとして石炭使用中心を宣言しなかった国は、もう少し時間が欲しいと言うことなのだろうが、その時間はもうない。
グローバル・カーボン・プロジェクトが公表したデータによれば、2021年は前年に比べて石炭の使用は5.7%上昇する見込みだと言う。これは新型コロナウィルス感染症から経済が回復してきたことが影響している。このために、過去最高の使用量を記録した2014年とあまり変わらない量となってしまっている。
少しでも明るい見通しを見つけようとすると、石炭使用中止を宣言しなかった国であっても、今後海外への石炭関係の投資を行わないと発表しているし、日本を始め各国は、発展途上国に対して二酸化炭素排出を抑えるための支援計画を発表している。しかしながら、これらの国々の経済の規模を考えると、全体の二酸化炭素排出にどれほど効果があるのか疑問だ。
世界各国での熱波、洪水、大型台風など環境が急速に悪化している事は明白なのに、踏み込んだ対策が取れないのは不安だけが残る。温室効果ガス排出の主要な犯人が石炭だとわかっていて、多くの重要な国がそれに取り組まないと逆宣言としたことになる残念な結果がCOP26だった。
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