このところNetflixのホーム画面を開くと勧められるのが「静かなる海」と言う作品だ。SF視聴の履歴から勧められるようだ。どのような作品かと思って見てみると、韓国で制作された作品だった。固定観念で「韓国ドラマ=恋愛ドラマ」と考えていたので少し驚いた。まだ見始めていないが、面白そうなので時間のある時に見ようかと考えている。
2022年1月8日のNetflixの総合トップ10 (日本)と言うランキングでは、ベスト10に韓国制作ドラマが7作品入っている。「その年、私たちは」、「愛の不時着」、「イカゲーム」、「恋慕」、「脱出おひとり島」、「梨泰院クラス」だ。
日本制作ドラマは、アニメが3作品。「呪術廻戦」、「鬼滅の刃」、「ワンピース」だ。他の海外作品が含めれていなくて、韓国制作が7作品。これが日本のエンターテイメント産業の現状と言うことなのか。
韓国制作のエンターテイメント作品は日本だけではなく世界中を席巻している。アカデミー賞を取った「パラサイト」やNetflixで、今日のベストテンでもまだ4位に入っている「イカゲーム」が代表的だ。
これは映画やテレビドラマに限ったことではない。音楽においてもK-Popのスターは世界中で受け入れられている。BTSは2年連続でグラミー賞にノミネートされている 。世界に進出している韓国のスターはBTSだけではない。男性のヒップホップトリオ、Epik HighやガールズグループBLACKPINKは、広く人気があり、Apple Music や Spotifyで世界中で売れている。
日経の記事で読んだが、2021年の韓国のコンテンツ輸出額は5年前の倍の1兆3000億円に達する言うことだ。特に好調なのは音楽の分野でBTSやBLACKPINKが引っ張っている。2021年に話題になったのは、「イカゲーム」に代表される韓国ドラマだ。「イカゲーム」は、配信開始から28日間で1億4200万世帯が視聴し歴代最多視聴記録を塗り換えたと言う。
この勢いは今でも続いており、「イカゲーム」は、先に書いたようにまだランキングの上位にある。
Netflixは、韓国市場向けだけでなく、世界市場に向けて韓国ドラマに投資を続けている。Netflixは過去5年間で1000億円程度を韓国制作ドラマに投資したと言われている。一方、NetflixはTBS制作ドラマの「日本沈没」も配信したが話題にはなっていない。
このエンターテイメント産業における日本と韓国の違いはどこにあるのだろうか。最初に思い浮かぶのは、他の産業と同様に、日本企業は、日本市場と言うある程度大きな市場を目的としてビジネスを組み立てているのに対して、韓国企業は日本の半分以下の韓国市場の規模のために、最初から世界進出を狙っていると言う違いにある。実際に日経の記事でもK-POPアーティストの所属事務所の韓国内売上高は3〜4割程度で海外比率が高いと言う。もともと狙っているところが違うのだ。
もう一つは1997年から98年にかけてのアジア金融危機の痛手から、韓国では政府が情報インフラ改革とコンテンツ輸出促進に投資を行ってきたことが挙げられる。
こうして生まれたデジタルプラットフォームは既存の放送事業などの構造を変え、新しいコンテンツを生み出す企業群を輩出させることとなった。その結果2000年代に入って、韓国ドラマがアジア全域に輸出されることとなり、日本でも韓流ドラマのブームが起こった。
日本でも今起こっている既存の放送事業からデジタルプラットフォームへの移行は、韓国では政府が既に20年以上前から促進していたと言うことになる。
韓国では、それ以来、ドラマや音楽の分野でも、デジタルプラットフォームを前提としてコンテンツを制作することが当たり前になっていた。この点が、日本のエンターテイメント産業が既存の放送などのプラットフォームに縛られていた事と大きく違うのではないだろうか。
実際に音楽の分野でも、韓国のアーティストはYouTubeなどのデジタルプラットフォーム使いこなしている。韓国語がわからないユーザに対しても、わかりやすい検索タグを加えたメタデータをコンテンツに付け加えて配信することにより、世界各国での受容の可能性を意図していると言う。その結果がBTS や BLACKPINKと言うことだ。
また、ゲームにおいても韓国企業と政府は次のステージへの投資を行っているようだ。韓国政府は、2021年5月に「メタバースアライアンス」を立ち上げて、200以上の企業を集結させている。この事業に対して韓国政府は2022年から1兆円程度の投資を行い、来るべきメタバースと言う新しいデジタルプラットフォームの構築とそこでのコンテンツ制作促進を目指すと言う。
この点に関しては、日本政府の今後のコンテンツに対する産業振興について詳しくないのでわからないが。今までの理解で言えば、クールジャパン構想と言う名前でアニメザなどの輸出を図ったがあまりうまくいっていなかったと言う記憶がある。
またメタバースの新しいプラットフォームを構築する投資を行う域にはなく、ようやくデジタル庁を立ち上げて役所の事務のデジタル化に四苦八苦している状況らしいと言う事だけだ。
そんな中でもソニーや任天堂と言った企業は自らのイノベーションで新しい製品やサービスを生み出して世界中で戦っているのだから余計素晴らしいとも言える。