インターネット広告とテレビ広告の有効性

by Shogo

元FacebookのMetaの昨年の決算報告がされた。結果は、前年に比べ100億ドルの広告収入の減少となった。原因は、AppleがiPhoneのプライバシーポリシーを変更したことにある。iPhoneのユーザはFacebookやInstagramも含めてすべてのアプリの使用に際して、ウェブでの行動履歴を共有するかどうか同意を求められることになった。当然そのような聞き方をされれば、多くの人が同意しないのは当然であろう。7割から8割の人がアプリに情報を共有させないを選んでいる。

この結果、Metaを含めてインターネット広告を取り扱う会社は、ターゲティングが行えなくなり、他の方法を用いてもターゲティングの精度が著しく落ちた。結果として、広告主がインターネット広告を削減することにつながり、Metaだけではなく、多くの会社が広告による収益を失うこととなった。

インターネット会社の広告依存のビジネスモデルの曲がり角に来ている。Googleも発表しているように、今後様々なターゲティングの方法が開発されるであろうが、ユーザのプライバシーと言う掛け声の下では、今までのようなターゲティングは不可能となる。インターネットで成長してきた広告業界にとってこれは大きな不安要素だ。

同時に、広告業界を20世紀より支えてきたテレビ広告についても、その効果が問われる調査結果が発表されている。調査会社のSamba TVによれば、2021年第4四半期に米国で放送された通常のテレビ広告の97%が、同じ55%の視聴者にリーチしていることがわかった。この広告のターゲットとなっている視聴者は、全米平均よりも多様性に欠け、所得の面で低い事もデータにより確認されている。

このデーターは、Samba TVが契約している4,600万台以上のインターネットに接続しているテレビのデータを集計したものだ。Samba TVは、自動コンテンツ認識技術を使い、テレビに表示されている内容を記録することができると言うことだ。

このデータから言える事は、あまり望ましくないターゲットに繰り返し広告を見せていることになる。無駄以上の広告費の使い方だ。

またSamba TVのデータによれば、同時期に放送されたTV広告の3分の2は視聴者の5人に1人しか届いていないこともわかった。

同じ人に過度に同じ広告を見せるのは、効果がないことは誰もが承知している。効果がないどころか、かえって反感を買うことすらある。そのような状況が、通常のテレビ放送では起こっていると言うことのようだ

家庭のテレビは様々なものにつながっている。その中で、通常のテレビ放送を見ている人は先の調査のように、低所得であったり多様性にかけるなど広告のターゲットとしては望ましくない状況になっているものと思われる。では、それ以外の人が何を見ているかと言うと、Netflixなどの広告の入らない配信サービスやYouTubeを見ていることが多くなっている。そこで、広告付きの配信サービスが今後は重要になってくるだろう。アメリカでは、すでに多くの事業者がいて競争が激しい。日本では、既存のテレビ局が広告付の配信サービスを開始しているだけだ。今後ここへの参入が出てくるだろう。

この結果、今までの既存のテレビ放送については、減少している広告費がさらに減少すると言う結果につながっていく。テレビ放送を中心としてきた電波メディアの地図が大きく変わりそうだ。そしてこの傾向はアメリカだけのものではなく、いずれ日本でも同様のことが起こっていく。

インターネット登場以前から、広告業界も広告主もテレビ広告の効率や効果に頼って、プロモーションを行ってきた。しかし、テレビ広告の魔法の杖のようなその力は既に失われてしまっているようだ。

テレビとインターネットによる広告と言う広告業界の基盤が大きく変動している。広告の有効性が大きく毀損されていく中、広告主にできる事は、できるだけ効率の悪い広告を削って、販売が落ち込む分を値上げで乗り切るしかないのかもしれない。それほど単純でないにしても、今までの様な効率でマーケティングが行えなくなっていることは確実だ。

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