Googleの独禁法訴訟

by Shogo

Googleに対して、米国最大の新聞チェーンのGannettが広告の購入・販売の技術を独占して、その地位を乱用して独占禁止法に違反をしているとして訴えた。

Gannettの訴状によれば、オンライン広告は年間2000億ドルの市場であるにもかかわらず、新聞は2009年以降広告収入が70%減少し、多くの新聞社が倒産していると述べている。その理由として、Googleが、新聞の広告をどのように売るかを管理して低価格で販売し、Googleだけが利益を享受しているとしている。

今回の訴訟は、Googleの広告市場支配に対して起こされた訴訟の最新の一つとなった。今年の1月に米国司法省と8つの州は、広告販売・購入システムを独占しているとして、そのシステムを他者への売却を求める訴訟を開始した。同様に欧州委員会も6月にGoogleの広告市場の独占に対する訴訟を起こした。それ以外でも、英国政府もGoogleの広告事業についての調査を行っているようだ。

Gannett は、USA TODAYを含む200以上の日刊紙の発行元である。今回の訴状によれば、2019年以降170以上の新聞社を閉鎖したそうだ。確かにアメリカでは新聞社の倒産や閉鎖が続いているのは事実だ。しかしながら、それがGoogleの広告販売システムの独占によるものかどうか疑問がある。

それよりもむしろ新聞を読む習慣が失われているほうに問題がある。インターネットの登場により、新聞は大きな影響を受けている。電子版で稼ごうと努力はしているが、それが多くの新聞社には難しい。

新聞社の収入源は、広告もあるが、販売新聞の販売収入もある。その比率は新聞社によって変わるが、多くの場合は、販売収入は半分以上となるのが一般的だ。新聞の購読者が減れば、販売収入が失われる。同時に、新聞の電子版のユーザーが少ないと広告効果がないとして、広告も減少するか安くなると言うのは自然な流れだ。それも、Googleの責任というのは違う。Gannett が言うように、Googleが新聞の電子版の広告を安く買い叩いているのではなく、ユーザーが増えないから広告収入も伸びないというだけのことのように思われる。

確かにGoogleは広告市場において圧倒的な地位を占めている事は間違いない。Googleの年間利益は600億ドルもあり、そのうちの約80%は広告事業から出たものだ。日本の広告費は全体で約7兆円で、これは広告の売り上げだから、Googleの利益と比べられないのは承知だが、その巨大さがよく分かる。

米国司法省は、過去にも同様にテクノロジー企業に対して独占禁止法を適用して訴訟を起こしている。1998年にMicrosoftがオペレーティングシステム市場での独占的な地位を利用して、ウェブブラウザーを不当にコントロールしているとして訴訟を起こした。これは、当時優勢だったNetscapeなどの他社のブラウザに対して、MicrosoftがWindows OSにInternet Explorerを組み込んだことが発端だった。OSの独占を利用して、ブラウザもコントロールするのは独占禁止法に反しているとの司法省の主張だった。しかしながら、その結果は、司法省が当初主張した企業分割ではなく、Microsoftが一部の制限を受け入れたことで2001年に和解の形で終わった。

もう一つの訴訟は、まだ裁判が続いているGoogleに対する訴訟だ。Googleの検索エンジンをデフォルトの検索エンジンとするために、スマホメーカーや通信事業者に巨額の支払いを行って独占を維持しているとして、司法省が訴えている。現時点ではまだ裁判が進行中だ。

独占禁止法が適用されるかどうかはまだ決まってはいないが、現実にGoogleはiPhoneのデフォルトの検索エンジンがGoogleにする対価として年間3兆円程度の支払いを行っている。これは、単純にビジネスの取引にも思える。いずれにせよ、Googleは、その巨大さ故に、いくつもの独占禁止法違反裁判を戦わなければいけないようだ。

今回のような独占禁止法に関する訴訟は、時間がかかることが予想され、今回のGannettの裁判もいつになったら決着がつくのか、予想もつかない。Googleが、そのいくつかの広告技術を使って広告市場を支配している事は間違いない。それを裁判所が、独占禁止法違反と判断するかどうか。Microsoftの事例を考えても難しいのではないかと思われる。

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