情報の信頼性

by Shogo

Reuters Institute for the Study of Journalismが発行した2024年版のDigital News Reportを読んだ。世界中のニュース消費行動やメディアの信頼性に関する調査結果をまとめている。かなり長いものなので、面白かったことだけ書いてみる。

通信社のReuters のレポートだから、ニュースについて調査している。まず、ニュースの情報源としてのSNSについてだ。Facebookでのニュース利用は、SNSではトップだが前年比4%減少している。一方で、YouTube、WhatsAppやTikTokなどのプラットフォームの利用が増加している。これは、Facebookの利用方法が変わってきているのだろう。

YouTubeでは31%、WhatsAppでは25%、TikTokでは13%のユーザーがニュースメディアとして利用しているという結果だった。興味深いのは、TikTokとX(Twitter)では、他のプラットフォームと比べて信頼できるニュースと信頼できないニュースの区別が難しいと感じている人が多いということだ。これは、想像通りといったことだろうか。あの情報洪水の中で、信頼できるニュースはどれかという判断は難しいだろう。

信頼できるニュースを特定するのが難しいプラッフォフォームのランキングでは、やはりTikTokが1位で27%、Xが24%で2位、Facebookが21%と3位、Instagramが20%で4位だ。

ソーシャルメディアでは、信頼できるニュースと信頼できないニュースの区別が難しいと感じている人は多いのは当然だ。SNSでは、情報元が信頼できるメディア企業ではなく、友人や知人からシェアされた情報が多く表示される。出所が知人であるため、確かな情報と思い込んでしまいがちだ。しかし実際には、真偽を十分に確認せずにシェアしている可能性が充分高い。YouTubeのような動画共有サービスでは、一般投稿者が作成した情報がまるで事実であるかのように拡散されることがある。動画は印象に残りやすく、情報の真偽が不明確でも信憑性が高く感じられてしまう傾向にあるからだ。

やはり、ソーシャルメディア全般に共通する課題は、プラットフォーム側が投稿内容に責任を持たないことだ。メディア企業は発信する情報の真偽を検証し責任を負うが、ソーシャルメディアはあくまで情報流通の場を提供するだけの立場を取る。結果として、真偽不明の情報が拡散されやすい構造になっている。プロバイダ責任制限法が改正され、誹謗中傷などによって権利が侵害された場合に、プロバイダが負う損害賠償責任の範囲や、発信者を特定するための手続きが改善されたが、偽情報やフェイクニュースに対しては責任を追わない。それどころか、明らかな詐欺広告が掲載されているような状況だ。今後、影響力が大きいSNSプラットフォーム事業者の責任を問うべきだろう。

もうひとつ興味深いのは、メディア企業、中でも新聞社の経営状況だ。メディア企業の経営は、広告収入の減少と読者流入の減少により大きな圧力にさらされている。新聞や雑誌などの伝統的印刷メディアは広告収入に大きく依存してきたが、インターネットの普及に伴い広告主の予算がデジタル広告にシフトしたことで、印刷メディアの広告収入は大幅に減少している。一方で、ニュースの主戦場がウェブサイトやアプリに移行したものの、GoogleやFacebookなどのプラットフォームからの流入に頼らざるを得ず、自社サイトへの直接流入は限定的だ。

こうした状況への対応として、新聞社はサブスクリプションモデルへの移行を進めようとしている。デジタル版の有料会員を増やすことで、広告収入に依存しない安定的な収益基盤の確立を目指しているのだ。しかしサブスク・モデルで成功しているのは、ニューヨーク・タイムズやフィナンシャル・タイムズなど一部の有力紙に限られているのが実情だ。

日本の多くの新聞社は、高い購読料を負担できる読者層が限られているため、デジタル有料化への移行が難しい。多少進んでいる日本経済新聞ですらニューヨーク・タイムズとは大きな隔たりがある。メディア企業、特に新聞社は、ネット時代に合わせたコンテンツ作りやマーケティング施策にも課題を抱えているということだ。

ニュースメディア企業が生き残るためには、購読モデルへの移行を進めつつ、GoogleやSNSへの過度な依存から脱却し、読者との直接的な結びつきを強化していくことが不可欠だ。とは言え、これは、簡単なことではない。しかし、偽情報とフェイクニュースの時代にあって、信頼性の高いニュースメディア企業の存在はますます重要になっている。

You may also like

Leave a Comment

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

error: Content is protected !!